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松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第38回

ドコモ使っていた 孫社長の絵文字戦略

2008年09月11日 22時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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世界で通用する絵文字の条件

 HTMLでも絵文字が扱えるようになってきた日本のメールカルチャーは、海外に輸出できるのか? これは日本のケータイ産業にとってはとても興味深いポイントではないだろうか。

 実際、絵文字はメールの装飾として活用されるかもしれないが、コミュニケーションの表現の一部として重視されるのは難しいと思う。

 以前、ニューヨークに住む工業デザイナーに絵文字を見せたところ、とても面白いと感想を述べた上で「欧米はタイピング文化なので、手書き風のイラストの絵文字よりも、フォントがたくさん内蔵されていて、色やタイプフェイスを変えて表現できる方が楽しんでもらえるかもしれない」という反応が返ってきた。

 海外のメッセンジャーにも絵文字のようなモノはあるが、SMSなどで扱われているのは「;-)」など記号を組み合わせた顔文字が基本。そもそもアルファベットそのものが意味を表すことはなく、単語にまとまって、もしくは発音して意味をなすカルチャーだ。

 一方、日本語はひらがなこそ表音文字であるが、漢字は発音と共にそれ自身が意味を持つ表意文字。

 日本では表音文字と表意文字を混ぜた文字のコミュニケーションを取る習慣が根付いているために、意味しか表現しない「絵文字」が受け入れられた。絵文字は文章の微妙なニュアンスを表現するための重要な要素として定着してきたのである。

 では、これが欧米に受け入れられるためにはどうすればよいのだろうか?

 例えば、漢字を絵文字として海外向けに提供してみてはどうだろうか。書家の國重友美さんの「英漢字」は漢字をアルファベットの組み合わせで構成して書にするアートを発表している。たとえば、漢字の「海」が「SEA」にも見えるようにデザインされた作品で、これは、とても良い題材になるだろう。

 漢字のタトゥーをファッションとして好む西洋人がいるが、文字が意味を持つアジアの言語的な特徴をうまく理解してもらう。その上で、漢字の絵文字をモバイルコミュニケーションの中で使ってもらうのだ。少しずつでも認知が広まれば、付随するコンテンツビジネスを海外に輸出できるようになるのではないだろうか。


筆者紹介──松村太郎


ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性について探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET



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