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遠藤諭の“ご提案” 第6回

ちょっと怖い、唐の予言書の話

2008年09月08日 15時13分更新

文● 遠藤諭

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 これは自分も読みたいし、日本語訳を出すだろうというということで、台湾出張で通訳をお願いするLさんに相談してみた。すると、日本人には難しすぎる中国の歴史の話が多いという。

 というわけで、日本語訳の出版はあきらめたのだが、調べていくとこの本がいかにすごい本であるかが分かってきた。平凡社「世界大百科事典」では、「禁書」の項に推背図の名前が出てくる。元代に世を乱す妖書として禁令が出されたとある。

推背図

これが「推背図」の現代中国語訳注本です

 神保町の原書房(易学書の専門店)に出かけて「推背図に関係する本はありますか」と尋ねると、「はいはい推背図ね」と言われて台北の漢口街にある書店を勧められた。

 その後、この本、ずっと私の本棚の中に入ったままだった。しかし、ずっと私の心にひっかかっていたことがあったのだ。それは「推背図」の裏表紙に書かれていた次の予言である。

二○○八年北京奥運動会中国金牌総冠軍
(2008年の北京オリンピックでは中国が金メダルを最も多く取る)

 当時は、オリンピックまで時間があったから、「へぇ~、そんなのありえるのかね? 随分近い予言だけど、外れたらどうするのかねぇ?」というくらいに思っていた。この本が出た頃に「北京オリンピックで金メダルを一番取る」と予想していた人ってほとんどいなかったのではないかと思う(その後、アトランタで金メダルをいっぱい取ったので信憑性は出てきましたが、正直、この段階では外れるだろうと思うのが普通だったはずだ)。

推背図

これが問題の裏表紙

推背図

これが「オリンピック予言」の含まれるページ

 しかも、よく考えるとこの現代中国語注釈本が出た段階というよりも、オリジナルは唐の時代に書かれたものである。つまり、1000年以上前に「北京オリンピックで~」なんてこと予言していたことになるわけだ。ちなみに、予言はどんなふうに書かれているのかというと、「推背図」では、60枚のお札のようなページ構成になっている。そこに点取り占いのような絵と、八卦、それに中国詩が必ず2つセットで付いている。じっくりページをめくっていくと、「北京オリンピックで~」の予言も見つかった。

 「推背図」(香港の現代中国語訳注本)の著者は、テレビを見ながら「当たった!」などと飛び上がったのか? それとも「やはり当たってしまったか」と、なんとも複雑な気分になったのか(というのは、推背図は60枚の予言しかなく、まだ解釈されていない予言は少ない。

 つまり、世界の終わりは近いのではないか=といっても、安易にそこまで解釈されていないところがこの予言書のよいところなのだが)? ちなみに、裏表紙をもう一度よく見ると「三十年後、中国世界第一等」と書いてあって、これは「中国が世界一の経済、文化大国になる」というような意味でしょうか。こうなると、唐の時代の予言書も、シミュレーションのような雰囲気になってきます。


 そうなのだ、今回の「ご提案」は、コレである!

未来を予言する最もよい方法は、 未来をつくってしまうことである

 あっすいません、アラン・ケイの言葉でしたねこれは……。


筆者紹介:遠藤諭

アスキー総合研究所所長。1991~2002年まで「月刊アスキー」編集長、2008年4月より現職。著書に、日本のコンピュータ黎明期に活躍した人たちを取材した「新装版 計算機屋かく戦えり」、朝日新聞に連載した「遠藤諭の電脳術」、「3日で作るPHPアプリケーション」(秦崇氏との共著)、「ジェネラルパーパス・テクノロジー」(野口悠紀雄氏との共著)など。ブログ“東京カレー日記”も更新中。

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