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遠藤諭の“ご提案” 第6回

ちょっと怖い、唐の予言書の話

2008年09月08日 15時13分更新

文● 遠藤諭

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中国伝説の予言書「推配図」


 そのモクさんと、渋谷の庄屋で飲み食いしたときに「とっても面白い本だよー」と勧めてくれた香港で出版された本があった。2001年に出た本で「推背図」(李淳風・袁天綱原著/莫天賜訳注/力出版 68HKドル)という。

 その後、その本を香港から送ってもらったものの中国語の本ではサッパリ読めない。ちょうど「本の雑誌」のHさんから「読んでない本ってありませんか?」というメールが来たので、この本について書くことにした。「本の雑誌」(2002年11月号)の特集「未読の王国」の中の「中国稀覯書美人女優的現代語訳注本」という文章である。


 以下、この本について書いている部分を引用する。

 (前略)中国の唐の時代に書かれた讖書(しんしょ=予言書)で、日本の某古書店で、写本が八○万円ほどのお値段で出ていた。それを買いました──というわけではないのだが、その現代語訳注本が香港で出ているのだ。モクさんによれば、中国人なら知らない人はいないくらい有名な歴史的な本で、今回、中国のWTO(世界貿易機構)加盟まで予言されていたことが明らかになった。しかも、その現代語訳注本の著者は、ウォン・カーウァイ監督の「天使の涙」とかに出ている女優カレン・モクのお父さんだそうだ。

 これは入手するしかない! だって、面白い予言書→中国人なら誰でも知ってる→WTO加盟→カレン・モクである。

 そう思って、香港在住の友人に頼んで買って送ってもらった。

 待つこと一週間、届いたのが「推背図」(李淳風・袁天綱原著/莫天賜訳注/力出版 68HK$)である。

 すると、私の奥さんが「この本なら諸星大二郎のマンガに出てくる」と言う。

 「諸怪志異」シリーズの単行本「鬼市」に、たしかに「推背図」と題する一話がある。

 五行先生の家に、役人たちが、讖書や禁書の取り締まりにやってくる。入れ違いに数人の男たちが家を出ていく。弟子の燕光(おばけちゃん)が、彼らと同行することになるのだが、道中、男たちはずっと議論に花を咲かせたり自説を開陳したりでにぎやかである。ところが、旅籠に泊まって一夜あけると誰もいない。かわりに床の上に一冊ずつ書があるだけ。五行先生が、讖書や禁書を人の姿に変えて逃がしていたわけなのだ。

 その中に「推背図」があって、人の姿ではずっとわけのわからないことをしゃべっている。弟子の「推背図とは何ですか?」の問いに、五行先生が答えて「讖書だよ。未来の予言書だ。李淳風が六十番まで讖(予言)を作った時、袁天綱が李の背中を推して、そこでやめておけと言ったそうだ。それで推背図という」とある。(後略)

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