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塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 第18回

塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”

著作権法をポジティブに

2008年09月21日 15時00分更新

文● 塩澤一洋 イラスト●たかぎ*のぶこ

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 ここまで「法律」と「法律家」について話しを進めてきたが、社会には法律以外にもさまざまなルールがある。学校生活のルール、各家庭のルール、会社のルールなど。その多くは、禁止的な規定を持っている。

 子どもが成長するプロセスで、家庭、学校、地域社会において、大人は子どもたちにそれらのルールを伝えていく。禁止的なルールを理解して共有し、その行為をしないように生活するのは非常に重要なことだ。

 しかし、「これはダメ」「○○するな」「それは禁止」……。そんな言葉ばかり受けて育ったら、窮屈な思いをするのではないか。あれもダメ、これもダメを繰り返されたら、自分らしい道をクリエイティブに生きていく前向きなチカラは湧いてくるだろうか。禁止的ルールを生のまま言われ続けたら、それをポジティブに変換することもうまくできない。著作権法と聞けば「コピー不可」とネガティブにあきらめる人になってしまうのではないか。

 「廊下は走るな」より「廊下は歩こう」、「他人が撮った写真をブログに使うな」より「作者の許可を得て使おう」。「××するな」ではなく「○○しよう」という「Let's」の気持ちで言葉をかける。

 いい法律家がルールをポジティブに翻訳して前進方向を示すナビゲーターであるのと同じように、大人が子どもたちの自由を最大化するナビゲーターであれば、その創造性は存分に発揮され、ひいては社会全体がクリエイティブに発展するに違いない。


筆者紹介─塩澤一洋


著者近影

「難しいことをやさしくするのが学者の役目、それを面白くするのが教師の役目」がモットーの成蹊大学法学部教授。専門は民法や著作権法などの法律学。表現を追求する過程でMacと出会い、六法全書とともに欠かせぬツールに。2年間、アップルのお膝元であるシリコンバレーに滞在。アップルを生で感じた経験などを生かして、現在の「大公開時代」を説く。



(MacPeople 2007年12月号より転載)


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