前頁までの検証で、「Atom 230」の性能がどれくらいかは理解できたと思う。では、その「Atom 230」は他のモバイルCPUと比較するといったいどのへんに位置するのだろうか? ここではAtomとそれ以外のCPUで性能を比較してみたい。
主なモバイルCPUのスペック | |||
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Atom 230 | Celeron 540 | C7 1.8GHz | |
FSB | 533MHz | 533MHz | 800MHz |
動作クロック | 1.6GHz | 1.86GHz | 1.8GHz |
2次キャッシュ | 512KB | 1MB | 128KB |
TDP | 4W | 30W | 15W |
CeleronはAtomに比べて動作クロックが高く、キャッシュ容量も大きいが、TDPはひとケタ大きい。C7はTDPがCeleronの半分程度だが、キャッシュが少ないことがわかる。
エンコードなどに高い性能を発揮
検証では640×480ドット、1分7秒の動画ファイルをエンコードするのにかかった時間を計測した。「Atom 230」のMPEG2への動画エンコード時間はC7の半分以下だ。「CineBench R10」や「PCMark05」のCPUスコアーもC7を上回っている。CPU性能は「Celeron 540」に及ばないが、サーバーやセカンドマシンとしては十分な性能と言えるだろう。
発熱が小さくCPUファンは不要
次に、システム全体の消費電力とCPU温度を計測してみた。システム全体の消費電力にはあまり差が出なかったが、AtomのみCPUファンが装着されていないにもかかわらず、高負荷時でもCPU温度が低いことに注目してほしい。C7も低いが性能差を考えると、ダントツにAtom優位だ。
ミニPCの新たな地平を拓く可能性を秘めたAtom
正直「Celeron=ローエンド」と認識しがちな自作ユーザーには、Atomは「アレ? こんなもん?」という結果に感じるかもしれない。正直に告白すると、ワタクシもそうです。しかし、Atomは価格も性能もCeleronの下、とインテル自身が定義しているのを忘れてはいけない。Celeronとどっこいの性能だったら、みんなが安いAtomを買って、CeleronとAtomが共食いになってしまう。
勝てないことが宿命づけられたCeleronとの比較よりも、低価格&ミニPC向けの直接の先輩かつライバルであるC7との差に注目してみよう。消費電力はほぼ同等ながらも、ほぼすべてのテスト項目においてAtomはC7を上回っている。さらに、搭載マザーの実売価格もAtomのほうが安価だ。Atomはコストパフォーマンスや、低発熱・低消費電力による“扱いやすさ”を武器に、ミニPCの新たな地平を拓く可能性を秘めている、と言っても過言ではないはずだ。……ただ、やっぱりCore2 QuadとかPhenomとかに慣れている身としては、なんだかその性能に煮え切らないものを感じてしまう。なんだろう? このなんとかできそうで、できないモヤモヤした感じ。次回は、最強のMini-ITXマシンを作り出すことで、そのモヤモヤを解消していきたい。
ベンチマーク環境
<Atom環境> マザー:intel「D945GCLF」、メモリー:「DDR2 PC6400 1GB」、HDD:HGST「HDP725050GLA360」
<Celeron環境> マザー:AOpen「i965GMt-LA」、メモリー:「DDR2 SODIMM PC5300 1GB」、HDD:HGST「HDP725050GLA360」
<C7環境> マザー:VIA「EPIA SN18000G」、メモリー:「DDR2 PC6400 1GB」、HDD:HGST「HDP725050GLA360」
※温度はソフトで計測できず、ヒートシンクに温度計を取り付けて計測
※グラフのベンチデータ提供:週刊アスキー 2008 9-2増刊号
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