Audio Check!
連載で常用している再生環境(第3世代iPod nano)で、Appleロスレス形式の音楽ファイルを試聴した。
まずは上原ひろみ「Beyond Standard」。ロックっぽさもあるジャズ・ユニットだ。音像は全体的に、やや硬質な明瞭さを持つ。特にピアノ、クリーントーンのギターの音色の表面に、(好ましい意味での)硬さと艶やかさを感じる。
ベースが低い音域に行ったときの重みも十分。量感を稼ぐことに気を取られて輪郭を緩くしてしまうこともない。それどころか量感とタイトさを併せ持つ。重さとタイトさと言えばドラムスもそうで、リズムセクションは重量感とぐいぐい進む推進力を兼ね備える。
また音場は全体に非常にクリアーで、余計な響きや音場を曇らせる雑味はない。その透明な背景の上で、ソースに含まれる響きがきれいに生かされる。
次はJacintha「Autumn Leaves」。こちらはジャズ・ボーカルのアップテンポな曲だ。
この曲はウッドベースがかなり低い音域で細かく動くのだが、そのラインを逃さず伝えてくる。単にラインを伝えるだけではなく、音色の響きや重みなどのウッドベースらしさにも満足だ。
ドラムスは特にソロの場面で目立つが、抜けの良さと「ドスドス」という重量感が気持ちよい。ピアノのコードプレイはやはり硬質な明瞭さがあり、単純な鋭さとはまた違う、非常に心地よいキレを感じる。
主役の歌声も音像を下手に膨らませず、しかし痩せさせることもなく、フォーカスをピタリと合わせてそこから周囲に自然な気配、響きを広げ、実に適当な存在感だ。もちろん歌い回しのニュアンスもよく届けてくれる。
総合評価
筆者が試聴したことのあるこの価格帯のイヤホンの中では、上位に位置付けられる音質だ。硬めのクリアネスが印象的である。
その音質と使いやすさが両立されている点もうれしい。このあたりは「国内メーカーらしい仕上げだな」と感心する。
さらにルックスもいいので、少し高めのこの価格に手が届くならば、選択肢に入れて試聴してみてほしい逸品だ。
RP-HJE900 製品情報 | |
---|---|
ドライバー | 直径8.5mm |
感度 | 100dB/mW |
再生周波数帯域 | 6Hz~28kHz |
インピーダンス | 26Ω |
入力コネクター | 3.5mmステレオミニプラグ(金メッキ) |
ケーブル長 | 約1.2m(着脱式) |
質量 | 約20g |
付属品 | イヤーピース(XS、S、M、L)、専用キャリングケース |
価格 | オープンプライス(パナセンスでの直販価格 1万9800円) |
Amazon.jpで購入:RP-HJE900
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