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松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第33回

全天候型の防水ケータイ「W62CA」

2008年08月07日 13時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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雷雨を的確に捉えるケータイユーザー


 サッカーを中止にさせ、山手線や京浜東北線を止め、夜の交通機関に混乱をきたした雷雨。夏の雷雨はいくつかの条件によって構成されるが、上空の寒気、地表付近の暖気移流、そして日射による気温上昇などによって引き起こされることが多い。

 地形的な要素があれば雷雲は決まった場所で起きるが、どこで雷雲がわいてもおかしくない。またどこに最も発達した雨雲があるかは、現在のレーダー網だけでは実用的ではなくなってきた。その情報が必要なのは、紛れもなく都市空間というフィールドにいて活動しているときだ。

 僕は気象が大好きだ。親に話を聞くと、物心が付いたころから、テレビの天気予報のひまわりの写真のアニメーションや天気図にかぶりついていたという。今になっても、空を眺めては雲の写真を撮ったり、さまざまな気象現象について詳しく調べたりするし、その怖さやダイナミックさに畏敬の念を抱いている。都市生活の中でも、気象だけは、必ず自然を感じられる要素である点も気に入っている。

 僕が通っていた中学では、「フィールドノート」と呼ばれる、植物や動物を観察して、定期的に先生に提出する理科の宿題が課されていた。僕は空のスケッチをしたり、季節に沿った植物や、ラジオの気象通報を聞き取った天気図ばかりを提出していた。

 高校生時代、選択授業で気象を取り自動車部に所属していた僕は、18歳になって自動車の免許を取ってから、北関東で雷雲を追跡したいと考えていた。

ツイスター

DVD化もされた映画「ツイスター」

 当時、竜巻を追跡し、分析する様子を描いた映画「ツイスター」にあこがれ、ソニーが始めて出した超薄型ノートパソコンVAIOの初代モデルとNTTパーソナルのPHSを接続して、TBSのウェブサイトから10分おきにレーダーエコーを取得しながら雷雲観察をしたものだった。

 映画で見ると簡単そうなことも、実際にやろうとするとなかなか難しい。レーダーのデータは遅延があるものの、だいたいの動きの傾向は分かる。そして目視も重要な要素だ。これらでどちらの方角に行けばいいかが分かるのだが、その方向に道があるとは限らないし、身の安全も考えなければならない。結論を言えば、うまくいった試しはなかった。



みんなの力で10分後の天気を予測


10分天気予報

10分天気予報のサンプル画面

 しかしケータイの発達には目を見張るモノがある。ウェザーニュースを始めとするケータイの公式サイトで、簡単に現在のレーダー画像が見られるようになっているし、雷雲が発生して登録した場所に近づいてきたらメールでお知らせしてくれる。ウェザーニュースは、ユーザーをネットワークして10分後の自分の場所のよりリアルな気象を予測するプロジェクトも今年6月から始めた。

 ユーザーの積極的な参加にも驚かされる。ケータイによって簡単に写真が投稿でき、また雨雲を見付けた瞬間に通知できるようになった手軽さも利いているだろう。しかし気象というテーマ性が、その参加性をより大きくしているのではないか、と思うのだ。

 空を見上げれば、晴れているか曇っているかはすぐに分かる。屋外を歩いていれば、暑い、寒い、風が強い、心地いい風、日差しの強さも分かる。人によって、感覚に対するしきい値は変わってくる。人間は気象現象という自然を肌で感じながら生活しているのだ。いわば、一人一人が「体感」というセンサーを持っていて、それをケータイを通じて集約する仕組みによって、10分先の正確な天気を知ることが可能になったのだ。

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