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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 第27回

「フェイル政府」のススメ

2008年07月29日 11時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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モバイル放送の撤退


東芝のモバHO!端末「モバビジョン」

 NHKニュースによれば、衛星放送会社「モバイル放送」(通称「モバHO!」)が来年春にサービスを打ち切るという(編註:記事公開後、サービス終了が発表されました)。ほとんどの人は会社の名前も知らないだろうが、知っている私も驚かない。同社は10年前に設立されて以来、迷走を続けてきたからだ。

 この会社の出発点は、需要があるかどうかではなく、日本に割り当てられた放送衛星の周波数(Sバンド)を守ることにあった。ここに東芝を中心とする90社が集まり、2004年に衛星を打ち上げてサービスが始まった。このときの社長は、東芝のDynaBookの生みの親として有名な溝口哲也氏だった。



周波数の確保を目的としたビジネスの無理


 しかしモバイル放送のビジネスには、最初から無理があった。まず移動端末用の小画面テレビという、すきま的なサービスにも関わらず、100億円以上かかる放送衛星を打ち上げたため、固定費が大きくかかるようになってしまった。

 また当初は携帯電話で受信できず、番組を見るためには6万円以上の専用端末が必要だ。さらに2.6GHz帯という高い周波数帯のため直進性が強く、室内で受信するには「ギャップフィラー」と呼ばれる補助的なアンテナを設置しなければならない。

 最大の問題は、ワンセグとの競合だった。ワンセグは携帯電話で無料で見られるのに、モバHO!で毎月2000円近く払って見られるのは、マイナーな番組が最大30チャンネル。おかげで加入者は、当初の目標200万人を大幅に下回る10万人で、昨年の決算は売り上げが6億円なのに、赤字が110億円を超えるという末期的状態だった。

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