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塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 第14回

塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”

DRMのない音楽配信

2008年08月24日 15時00分更新

文● 塩澤一洋 イラスト●たかぎ*のぶこ

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3つの制約から解放され 真の音楽配信が始まる


 では「DRM後」には何があるのか。DRMの意味を掘り下げながら検討しよう。  音楽の販売は、「価格」「音質」「コピー・再生可能度」の組み合わせだ。例えばライブコンサートは、値段は無料のものから超高額のものまで多様、音質は当然生だから最高、コピーは不可で聴くのは一回きりという組み合わせが普通だ。この点、'07年5月にスターダスト・レビューが行ったデビュー25周年記念ライブは、録音・撮影OKだったため大いに話題になった。

 またCDは、いい音質の音楽が2、3000円程度で買えて、コピーは自由、CDがキズついて再生できなくなるまで何度でも聴くことができる。一方、すでに市場から消えようとしているCCCD(コピーコントロールCD)は、価格がCDと同じであるにもかかわらず音質がCD以下で、コピーができない(とされている)。

 そもそも私たちは、「音楽」を買いたいのであって、CDというディスクを買いたいわけではない。音楽をCDから取り出して、自由な形態で聴きたいユーザーたちのニーズがあるのに、音楽をいつまでもCDの中に「閉じ込めて」おこうとしたCCCDは、ユーザーに受け入れられるはずはないのだ。

 一方、iTunes Storeは、唯一国際的に成功したオンライン音楽販売だ。音楽という「表現」をCDという「媒体(メディア)」から切り離し、音楽だけを流通・販売する手段を切り開いた。大都市以外に店舗を構える零細なレコード・CD店が多種多様なCDを在庫するのは不可能。

 そこへ、地域を問わずに同じ品揃えの楽曲を提供できるストアが運営されるようになったことは、音楽文化の発展に間違いなく貢献している。すべて30秒間視聴して買えるから、いわゆる「ジャケ買い」をしてイタイ思いをする危険も少ない。

 音楽好きな消費者が大歓迎するばかりでなく、音楽を創作する作曲家・作詞家、演奏家も、全国展開する店舗に自分の作品を置いてもらえるのだから、こんなうれしいことはない。


(次ページに続く)

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