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塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 第10回

塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”

表現は「動」

2008年07月27日 15時00分更新

文● 塩澤一洋 イラスト●たかぎ*のぶこ

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 たとえば子どもが大好きな紙芝居。紙に描かれた絵は動かない。場面の転換も単に紙を1枚抜き取るだけだ。それなのに、不思議なほどワクワクする。これは、画面転換以外の部分に魅力があるからに違いない。話の面白さもさることながら、話の世界に引き込んでいく「語り」のチカラが大きい。プレゼンの主体もあくまでも語りだ。そんな語りの中の、動的な要素を探ってみよう。

 語りの動は、まず声の出し方にある。声の強弱、高低、音量。語気を強めたり弱めたりしてアクセントを付け、声のトーンを高めたり低めたりして抑揚を付ける。そして音量を上げたり下げたりすれば、聴衆は聞くことに集中し、話に引き込まれていく。重要なところの音量を上げるだけが能ではない。しーんと話に聞き入っている聴衆に、最も大切な部分を小さな声で、でもはっきりと話すと、その部分が聴衆の脳裏に刻み込まれる。

 次に速度。内容の緩急に合わせ、しゃべる速度も変化させる。常に聴衆が理解しているかを確認しながら話を進め、理解が難しいと思われる個所はゆっくりと、冗長になりそうな部分は快速に話す。

 「間」をとることも重要だ。立て板に水のように話したあと、ふと無音部分を作ると、聴衆はほっとひと息つけるし、余韻が残る。ちょうど、和歌で五七五七七の「五」のあとにある3拍が余韻として心地よいリズムを作るように、間の存在が、言葉(音のある部分)への意識を持続させる。内容を消化するための時間を作ることにもなる。

 また、必要に応じて聴衆に問いかけると、聴衆は自分の頭で考えるきっかけを得る。ただただ受動的に話を聞くだけでなく、自分の頭も使ってプレゼンに「参加」できるようになるのだ。自分の思考とプレゼンの推移とをすり合わせながら聞くことになり、内容の理解も進む。


(次ページに続く)

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