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深紫外光を10mWで発するダイオードを開発

世界最高出力の殺菌ダイオードが誕生!

2008年07月07日 22時59分更新

文● 末岡大祐/アスキーネタ帳編集部

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 1962年に誕生した発光ダイオード(LED)は、小型、省電力、長寿命というメリットから、その進化とともにあらゆる分野で利用されてきた。信号機や駅の発車案内板、電光掲示板など、街中でもよく見かけるだろう。

 これだけ生活に密着するようになったLEDだが、研究・開発はまだまだ終わっていない。このたび、独立行政法人理化学研究所松下電工は、新しいLEDを完成させた。これは、殺菌効果が高い波長280nm(ナノメートル、10億分の1メートル)の紫外光を、世界最高出力10mW(ミリワット、1000分の1ワット)で発するLEDだ。

LED

これが今回開発に成功した、高出力LEDの仕組み(提供:理化学研究所)

 波長260~280nmの紫外光は、バクテリアなどを直接殺菌する効果が最も高いと言われており、殺菌、浄水、医療分野、高演色照明、公害物質の高速分解処理など幅広い分野で応用できるため、世界中で開発競争が激化しているという。今回の深紫外光を発するLEDの開発成功は、日本が世界に対して一歩先んじたと言えるだろう。

 深紫外半導体発光素子の構成材料である窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体は、深紫外LEDを実現する材料として注目されていたが、結晶欠陥が多い、電気抵抗が大きいという理由から、十分な発光効率が得られずに、高出力の深紫外LEDは実現できていなかった。

 そこで研究グループは、窒化アルミニウムガリウムにインジウム(In)を数%添加し、さらにアルミニウム(Al)の組成比を従来の20%から50%以上に高めることで、飛躍的に高い発光効率を持つ「窒化インジウムアルミニウムガリウム4元混晶」(InAlGaN結晶)を作り出した。これにより、単独素子で世界最高出力の10.6mWの「室温連続出力動作」を成功させたという。ちなみに、これまでの記録は、アメリカのサウスカロライナ大学の研究チームが発表した8mW(波長280nm)だった。

LED

小さなLEDが人類の大きな助けになる(提供:理化学研究所)

 今回の成果により、携帯用小型殺菌灯などの実用化が期待できるとともに、今後さらなる高出力化が実現できれば、各種医療、生化学産業、汚染物質の高速分解処理などへの応用も可能になるとのことだ。


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