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塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 第9回

塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”

世界の中心で“I”を叫ぶ

2008年07月20日 15時00分更新

文● 塩澤一洋 イラスト●たかぎ*のぶこ

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ひとりひとりが世界の中心 そこから広がるネットワーク


 “I"を表現する道具立ては、ブログやポッドキャストといった仕組みの側だけでなく、ユーザーの身近なところでも増えている。アップルが世に出すiTunes、iPhoto、iWeb、iCal、iWorkといったいわゆる「i」アプリケーション。これらはすべて“I"を表現するためのツールだ。

 自分の音楽、自分の写真、自分のウェブサイト、自分の時間、自分の仕事……。すべて“I"中心のクリエーティブな生活をサポートする道具として提供されている。そしてそれを使うプラットフォームとしてのMacは、“I"のためのコンピューター。iMacをはじめとして、Macはまさにパーソナルなコンピューターなのである。

 アップルはこのように、“I"中心主義を前面に押し出してプロダクトを展開している。でも、中心に原点を打ってそこから世界を広げていく発想は、アップルだけでなく、英語人たちが生み出すものの多くに見られる。

 たとえば、英国のトニー・ブザン氏が提唱する「マインドマップ」はとてもわかりやすい。検討するテーマなど問題の端緒を図の中心に置いてから派生するアイデアを放射状に記述していく発想法、ブレインストーミング手法。これによって、明確な原点から周辺部へと進める思考の足跡を客観的に観察することができる。中心から外へ、という方向性と発展性を持った思考形態だ。

 一方、日本人は外枠から内側へと考えていくのが得意。最初に外郭を確定したうえで、その内側に入るものを考える。ベン図思考と呼んでもいい。

 その思考では“I"が希薄になりやすい。“I"を「集団の一員」と見るからだ。「○○会社の社員」とか「○○大学の学生」などと、所属する団体の構成員として人を認識し自分を位置づける。外枠が大切なのである。


(次ページに続く)

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