ガスで膨張する携帯のバッテリーパック
なぜ、携帯電話のバッテリーが膨張するのかというと、ここまで見てきたように、使用状態や経年変化により、内部の電解液が気化したものと考えられる。ただし、それでイコールなんらかの事故につながるかというと、そうでもない。実は、例えば携帯電話の積層型バッテリーの場合、フィルムで電極とセパレーター、電解液を封じ込めている。内部の圧力が一定を超えると、フィルムの接合部が破断し、ガスが外部に放出されるという最終安全装置が備えられているからだ。
また、かつて複数メーカーを巻き込んでのノートパソコン用バッテリーの大規模回収へと発展した、2006年のソニー製バッテリーの発火事件は、製造工程での金属混入が原因だった。金属がセパレーターを破りショートが発生し、前述のようなメカニズムが進行した。これをきっかけに、(社)電子情報技術産業協会(JEITA)などが、万が一の場合でも、電池やバッテリーユニットが破損しないような素材を採用するなどの対策を呼びかけるなど、安全対策は高まっている。
一方、安全面は確保されたとしても、それでもリチウムイオン電池のトラブルは発生している。原因はいろいろあるようだが、なかには制御ソフトの不具合など、ユーザーに瑕疵がないケースもある。そもそも制御さえきちんと行なっていれば、リチウムイオン電池はそうそう充放電で劣化や膨張したりしないという話もある。その根本には、機器メーカーと電池メーカーのコミュニケーション不足があるとか、携帯の小型化のために制御機構の設計がおざなりにされているという声も聞こえてくる。
電極などの改善で、今後、容量が数倍のリチウムイオン電池も登場してきそう。ユーザーとしては、同時に寿命の長い製品にも期待したいところだ。
ドコモの場合、プレミアムクラブ(無料)へ加入していると、同一携帯を2年利用するごとに、バッテリーパックを1つもらえる特典がある。筆者の場合、そんなことはすっかり忘れていたので、拳を振り上げドコモショップへ向かったのだが、帰りは自分の携帯のぶんももらってホクホク顔であった。ので、皆さんも念のため確認してみるといい。ちなみに、携帯のバッテリーは、充放電を繰り返すとだんだん充電容量が少なくなり、最後にはフル充電の状態でも通話したとたんに電源が落ちる。これがバッテリーパックの寿命で、通常使用でだいたい2年ほどで寿命がくると言われている。