このページの本文へ

テクノドリームI:工学~それは夢を実現する体系

東大工学部で富野節が炸裂!ロボットの開発なんかやめましょう!

2008年06月17日 13時00分更新

文● 吉川大郎/アスキーネタ帳編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

富野氏のことばその4 「システム工学があるとすると“循環工学”なんだよ」

永久機関論なんていうのがナンセンスというのは承知です。承知のうえで、「それをやってみせるよ」という工学に行かなくちゃいけない。というときに、政治経済論も含めた、つまり「循環させるところにどう行くか」と考えていくべきかと。

━━司会の工学部 内田麻理香特任教員に、「打ち合わせの際に右肩上がり論についてお話がありました」と話題を振られて━━

富野氏 「ノーベル賞の対象になる研究」という問題が、俗に言う新発明、新発見に比重がかかっていたという風に、すごく雑な理解をしています。ところが、だからといってノーベル平和賞みたいな、とんでもなく訳の分からないものもあるわけで、賞に値するかどうかも疑問なわけです。“ノーベル賞”という価値論が、本来そんなにステータスを持ったものなのかということも考えないといけないのに、いけない・の・に! 今回のこと(対談)がありまして、たとえば東大生になってくる……特に理工科系の学生さん達の性質というモノを教えていただいて、正直ビックリしています。

 ほとんどの大学院生がノーベル賞を取るつもりで研究をなさっているようです。が、今言ったとおりです。ノーベル賞って、中世期的な規範に則った賞でしかないのではないか、人類、文明というモノを、発達するもの=右肩上がり論=人類はずーっとニュータイプになっていくぞっていう思想であったのではないかと。その右肩上がり論とはどういうことかというと、無限論なんですよ。果てしなく上昇するという観念です。

 だけどそれは、果たしてそうなのだろうか? ということは……つまり石油の埋蔵量の問題を心配されるようになった頃が1960年代半ばだったと思います。その頃から考えれば当然なんですが、エネルギー有限論というよりも、地球有限論というものがあって、「本来有限の地球の中で我々は1万年も2万年も、ひょっとしたら10億年くらいは生きていたいんだよね」と言うのは、本来動物の欲望なのではないか、という風に照らしあわせて考えたときに、「資本主義も社会主義も含めてなんですけれども、人間の経済的、行為自体が、地球に対しての悪であるんだから」という論理はなぜこうも……なぜこうも定着しないでエネルギー消費論というところに行っていて。なおかつ消費者対策をしているんだというのは、なんなんだという風に考えていたときに、一見、これは文明論であるから、文化系の人が考えて良いようなことなんですが、実は地球というシステムで考えていったときに完璧にシステム論に乗っかっているはずなんですよ。

 ですから僕は、システム工学という言葉を何十年か前に初めて聞いたときに、システム工学というのは、そういうシステムをどのように永久に運用していくための、永久機関論まで目指している工学かと思っていたのですが、「えー」って、目の前のことを一生懸命やることなのねって。だったらそれは、みんなで死んでいくぞ、効率よく死んでいくための技術を高めているだけではないかと思っていた。何を言いたいかというと、だからこれから目指すべき事は、今みたいな論法だけでいったら、「ホントにみんな死んじゃえ」って話なんです。だけど、つい数年前まではそうやってお勉強が出来る人に噛みついているだけの富野さんだったんだけど(会場笑い)、年取ったんで少しは勉強した(笑)。

 勉強して、ほんとうに、目指すべき、つまりシステム工学があるとするとどういうことかというと、「循環工学」なんだよね。永久機関論なんていうのがナンセンスというのは承知です。承知のうえで、それをやってみせるよ、という工学というところに行かなくちゃいけないというときに、政治経済論も含めた、つまり循環させるというところにどう行くかと考えていくべきかと。そういう視点で考えたときに、単純に工学の問題で済まない部分があるわけだから、工学者がいつまでも(教授陣の方向を向いて)「私たちは宣伝がヘタな技術屋だからね」っていう先生だけを野放しにしていくようなことはいけない!(教授陣・会場大笑い)

 でもこの先生に関してだけは「偉い」って言わなくちゃいけないんだよ。だってこういう事を言う人をそばに置いておいて笑っていられるんだもん。ホントの硬派の技術者は「なにソレ」って言って、だいたいこんなところに出てこないんだからね。だから先生は偉い。だから、こういうところを切り口にして、工学論だけではないんです。システム……つまり、今そういうことで言うと、「金融工学」という言葉だってあるのは皆さんご存じですよね? 金融工学という言葉だってあるのは皆さんご存じですよね!? 金融工学という言葉だってあるのは皆さんご存じですよね!! ……っていう、工学で金融をいじっている奴がなんでサブプライム問題を出すんだって言うときに、「どこに工学があるんだ」ということも考えなくちゃいけないところまで、広げていただきたいということです。

 そう考えていったときに工学という問題を中世までのレベルで考えている、ただ機械的な科学技術を達成……もっと高度に達成させる、つまりその「高度」というのをどこに目指すべきなのかという視点は、間違いなく旧世代には出来ないわけだから、ニュータイプである諸君が感じてもらわないと困るというのが、オールドタイプの逃げ口です。(笑い)

次ページ <富野氏のことばその5 「GoogleとYahoo!が合併しようが提携しようが、オマエらさっ」>に続く

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン