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空気の壁に立ち向かえ!

ホントにチャリで時速120km出す技術

2008年06月11日 15時58分更新

文● 二瓶 朗

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恐るべき敵「空気抵抗」とどう戦うか

 前回はロードバイクの素材と軽さの関係などに言及したのだが、実際のところ、軽けりゃ速くなるってものでもない。えてして、単純に高速を狙う乗り物というものは、だいたいこういう流線形に落ち着くのだが、これは結局、空気抵抗を軽減するのが最大の目的である。

 普通のロードレースだと、人間の身体がモロに空気にさらされるから、その空気抵抗は相当なものになる。例えばロードバイクを時速30km以上で走らせようとすると、消費エネルギーの実に80%が空気抵抗を打ち消すため“だけ”に使われていると言われる。なんという非効率! だから、1日に200kmもの距離を走ることも珍しくない自転車レースに出場する選手たちにとって、いちばんの敵は空気抵抗だったりする。

 空気抵抗と戦うために、まず思いつくのはヘルメットホイールなんかだと思う。プロの自転車乗りたちは、WHPSCで使われている全体エアロ自転車ほどではないけれど、空気抵抗を極力抑えるアイテムを使う。まず、ヘルメットは後ろの長いエイリアンチックなエアロヘルメットに。ホイールはディスクホイールに。フレームも全体的に断面が平べったくなるものへ。そして乗車ポジションは極端に前屈みになる。

前屈みの乗車ポジション

2007年ツール・ド・フランス第13ステージの個人タイムトライアルの1シーン。Levi Leipheimer(チームディスカバリー)の激走。ヘルメットにホイール、フレームまでTT用のエアロ仕様だ。自転車メーカー、トレック社のツール・ド・フランス2007レポートより

GIROのエアロヘルメット

GIROのエアロヘルメット。標準価格2万3100円。空気抵抗を抑えると同時に、ベンチレーションも効果的に行われるように設計されている。コレをかぶったら、乗車フォームをかなり前屈みにして、ぼんのくぼ(首の後ろ)がキッチリ隠れるようなフォームでないとあんまり意味はない。あと重量310gてのはちょっと重い

FULCRUMのエアロディスクホイール

FULCRUMのエアロディスクホイール。フルカーボン。標準価格46万5150円。自転車の場合、ホイールが回転するほどスポークが空気抵抗を強めることになるので、実際はこういう板状が理想的。でも995gと重く横風に極端に弱くなってしまう

 とはいっても、長丁場となるツール・ド・フランスなどのレースでは、空力仕様で挑むステージはあまり多くない。写真のような空力装備バリバリなのは、選手がたった1人で短距離(といっても50kmあるステージもある)を全力で走ってタイムを競う「個人TT(タイムトライアル)」と呼ばれるステージぐらい。

 ほかのステージだと、短距離を超高速で走ることよりも、持久力を温存しつつそれなりの速度で走ることが求められる。だって1日200kmぐらい乗らなきゃいけないんだから。しかも、それが1週間ぶっ続けだったりするんだから。いやもう大変だと思いますよ、プロ自転車乗りって人たちは。

 だから、ずっと空力仕様で走りなさいよアンタ、って言われてもソレは無理。だって極端な前屈みなわけで。ディスクホイールなんて横風受けたらもうヘロヘロですよ。

 そんな彼らが、短距離ステージ以外の過酷なステージを走り抜くためにはどうしているかといえば、「スリップストリーム」の活用である。

(次ページはジェットストリームアタ……)

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