恐るべき敵「空気抵抗」とどう戦うか
前回はロードバイクの素材と軽さの関係などに言及したのだが、実際のところ、軽けりゃ速くなるってものでもない。えてして、単純に高速を狙う乗り物というものは、だいたいこういう流線形に落ち着くのだが、これは結局、空気抵抗を軽減するのが最大の目的である。
普通のロードレースだと、人間の身体がモロに空気にさらされるから、その空気抵抗は相当なものになる。例えばロードバイクを時速30km以上で走らせようとすると、消費エネルギーの実に80%が空気抵抗を打ち消すため“だけ”に使われていると言われる。なんという非効率! だから、1日に200kmもの距離を走ることも珍しくない自転車レースに出場する選手たちにとって、いちばんの敵は空気抵抗だったりする。
空気抵抗と戦うために、まず思いつくのはヘルメットやホイールなんかだと思う。プロの自転車乗りたちは、WHPSCで使われている全体エアロ自転車ほどではないけれど、空気抵抗を極力抑えるアイテムを使う。まず、ヘルメットは後ろの長いエイリアンチックなエアロヘルメットに。ホイールはディスクホイールに。フレームも全体的に断面が平べったくなるものへ。そして乗車ポジションは極端に前屈みになる。
とはいっても、長丁場となるツール・ド・フランスなどのレースでは、空力仕様で挑むステージはあまり多くない。写真のような空力装備バリバリなのは、選手がたった1人で短距離(といっても50kmあるステージもある)を全力で走ってタイムを競う「個人TT(タイムトライアル)」と呼ばれるステージぐらい。
ほかのステージだと、短距離を超高速で走ることよりも、持久力を温存しつつそれなりの速度で走ることが求められる。だって1日200kmぐらい乗らなきゃいけないんだから。しかも、それが1週間ぶっ続けだったりするんだから。いやもう大変だと思いますよ、プロ自転車乗りって人たちは。
だから、ずっと空力仕様で走りなさいよアンタ、って言われてもソレは無理。だって極端な前屈みなわけで。ディスクホイールなんて横風受けたらもうヘロヘロですよ。
そんな彼らが、短距離ステージ以外の過酷なステージを走り抜くためにはどうしているかといえば、「スリップストリーム」の活用である。
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