現在の開発状況はどうなっているのか
───現状で、燃料電池車両と水素エンジン車両を比べたときに進捗状況はいかがですか?
柏木 世間に出まわっている台数では、燃料電池車両の方が多いですね。しかし、ビジネスとして考えた場合は水素エンジンの方が有利だと考えています。燃料電池は、生産するときに多くのレアメタルが必要になり、そのためコストも掛かってしまいます。もし世間のクルマが全て燃料電池車に変わるとしたら、現在埋蔵されているレアメタルをすべて使用しても足りません。
それを考えると、水素エンジンは有利です。生産ラインも、ほぼ現状のままでいけますし、構造もLPGを使用しているタクシーと一緒だからです(トランクにタンクを備えて、そこからエンジンに燃料を送る)。同様に生産すれば量産化も難しくはないのです。これから、ガソリン価格がさらに高騰し、温暖化の問題が深刻さを増していったときに、すぐに対応できるのは水素エンジンではないかと考えています。
───では、現状での水素エンジンの問題点はないのでしょうか?
柏木 リース販売している「ハイドロジェンRX-8」は、ガソリンを使用したときの出力が210ps、水素を使用したときが109psと約4割減になってしまいます。その点は問題ですが、ただ、これはレシプロのガソリンエンジンで言えば、ほぼ1500ccクラス相当の出力です。街乗りなら問題ないレベルではないでしょうか。また、航続距離も水素だけだと100kmと、まだまだ短いのが課題です。
しかし、現在開発している「プレマシー」の水素エンジン車では、RX-8に比べて、出力が40%アップ(約150ps)、航続距離も2倍(約200km)にすることができました。しかも、プレマシーは、発電用のモーターとバッテリーを備えたハイブリッド機構を併せ持っていますし、今までの縦置きロータリーエンジンに対して、初めて横置きを採用しました。前輪駆動車(FF車)にも水素ロータリーエンジンを搭載できるようになったのです。この開発により、今後はいろいろな車種に水素ロータリーエンジンを採用することも可能になります。
これらの点は、今後の商品化に向けた、大きな一歩です。ですが、まだ水素を使用するためのインフラが整っていないのが正直なところです。ただ、マツダの水素エンジン車両は、ガソリンも併用できるバイフューエルというシステムを採用しているので、インフラの環境に応じて燃料を使い分けることができます。
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