ほかの製品では絶対撮れない絵
デジタルカメラでも連写に強い製品はいくつかあるが、本機の場合、画素数を落とさずフルのサイズで撮れるという点が大きい。メモリーカードの価格も下落を続けているので、とりあえず連写して最良のカットをあとから選ぶ撮り方をしない理由が思い付かない。
写真黎明期の逸話として、写真が開発されるまでは馬の走り方がよく分かっておらず、画家たちは間違った描き方をしていたという話がある(有名なところではジェリコーの「エプソムの競馬」があるが、これはあえてそう描いたもののようだ)。
ともあれ、写真が開発されてから現在まで、高速度写真や連写はさまざまな動きの謎を解き明かしてきた。われわれの知的好奇心も楽しませてくれる。いままで数百万円クラスで科学技術用途に提供されてきた「高速度カメラ」が一般消費者に手の届く価格で手に入るのだから、これはかなりすごいことだ。
超高速連写/超高速動画という特徴が目立つが、光学式手ぶれ補正搭載のロングズーム機としてもみてもよくまとまっている。静止画撮影の結果に関しては、特筆するほど画質が良いというほどではないものの、とりたてて悪いところも見当たらない。ハイライト部分の周辺にわずかに着色が見られる場合もあるが、最近のロングズームデジタルカメラとしては(画素数を除けば)平均的な画質と言えるだろう。
「普通の」望遠ズームデジタルカメラが5~6万円で買えてしまう現状を考えると、10万円を超える価格は高価だ。スポーツやモノの動きを専門的に解析するといった用途だけでなく、単純に撮って楽しむだけでも、損のない1台と言える。
その機能ゆえに「特別なカメラ」のように思い(であることは確かなのだが)、「趣味のために買うのはぜいたく」と感じる人もいるだろう。しかし考えてみれば、プロでもないのに数十万円のレンズや機材を揃える趣味人が多いのがカメラの世界である。
そういった趣味性の高いカメラ市場で、これでしか撮れない画像があるというのは、本機の大きな強みだ。もちろん「普通の」静止画を撮ることも、ハイビジョンカムコーダとして使うこともできる。そう考えれば決して高い買い物ではなく、値段に見合った満足感が得られる製品と言える。