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長~く使える極上のPCケース 第5回

[特集]We Love Case! こだわるから楽しいんだ

長~く使える極上のPCケース【ユニティ編】

2008年05月05日 10時00分更新

文● 加藤 勝明

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 これまで「長く使えるケース」をテーマに、代表的ケースメーカー(アビー/クーラーマスター/サーマルティク/アンテック)のイチオシ製品を紹介してきた。おかげでケースを見る目が肥えてきたのはいいが、ふと自分の部屋を見るとハイエンドケースの置き場所なんかどこにもない……という人もいるかもしれない。現状のハイエンドケースは水冷・空冷含めた冷却能力の高さと拡張性を伸ばす方向にあるだけに、どうしてもコンパクトさは犠牲にならざるを得ない(その点アンテックの「Mini P180」は新鮮だったといえる)。
 そこで、今回紹介する「ユニティ」編では、これまであえてスルーしてきた「スモールファクター」なケースにスポットライトを当ててみた。拡張性の高いATXだけが自作PCじゃない。Mini-ITXやNano-ITXのような“超小型”なものだって熱いのだ!

ユニティ

Mini-TIXやNano-ITXなどの小型PC用ケースといえばユニティの独壇場だ

Mini-ITXって何だ?

 さて、実際のケースのチェックを行なう前に「Mini-ITX」って何だ? という人のための理論武装を行なっておきたい。以前当サイト「アキバで恥をかかないための最新パーツ事情(マザー編)」でも解説した通り、現状自作PCというと「ATX」が主力だ。さらに小さいマザーとなると拡張スロットを減らした「Micro ATX」があるが、もっと小ささが欲しいという人のために生まれたのが「Mini-ITX」「Pico-ITX」「Nano-ITX」の3種類のフォームファクターだ。

フォームファクタ

マザーボードのフォームファクター。左からATX、Micro-ATX、Mini-ITX、Nano-ITX、Pico-ITX

 Mini-ITX以下3つのフォームファクターの特長を簡単にまとめると以下のようになる。

  • 基板サイズが小さい。17cm×17cm(Mini-ITX)~10cm×7.2cm(Nano-ITX)
  • グラフィック機能はチップセット内蔵のものの利用が基本。グラフィックボードが装着可能なものは少ない
  • 拡張スロットはPCI×1が基本
  • メモリースロットは1本
  • SATAは多くて2つ。1つの場合も!

 そして何よりも重要なのは「CPUの選択肢が限られている」という点が重要だ。Mini-ITX以下のマザーでは、VIA製の「C7」やその後継である「EDEN」や「Luke」といったCPUを“マザー上に直接”実装しているため、CPUをあれこれ選ぶことはまず不可能だ。
 また、C7を始めとするVIA製CPUは消費電力が低いため小型ケースには最適のチョイスなのだが、お世辞にも性能は高いといえないことも忘れてはいけない。メールやウェブが使えれば事足りる作業や、サーバー的な用途でなら利用できるが、クリエイティブな作業や3Dゲームなどもっての他だ。

C7

VIA製のCPU「C7」。Pentium互換CPUをルーツに持つため、インテルやAMD製のCPUと同じように普通にWindowsを動かせる。TDPは1.2GHz動作でわずか7Wと低いが、処理性能はお世辞にも高いとは言えない。OSはVistaよりもXPの方が向いている

CN700

C7用のチップセットがVIAの「CN700」。グラフィックには「UniChrome Pro」エンジンが使われているが、3D描画性能は皆無といってよい

 無論、Mini-ITXでもSocket AM2やLGA 775のCPUを装着できるマザーも存在するが、価格や入手性に難があるものが多い。CPUクーラーも大型化してしまうため、超小型ケースは諦めねばならない場合も多い。
 さらに、小さいフォームファクターやケースを志向すればするほど、パーツ選びはどんどんシビアになってくるという点も見逃せない。ケースが小さいだけに高発熱なパーツは使えない(使いにくい)うえに、通常の自作PCで使う規格のパーツが利用できないことも多い。メモリーはノート用のSO-DIMMを利用したり、HDDは2.5インチでないと入らないケースはごく当たり前になる。

 ……と、このようにまとめると小型PCを使う意義がほとんどないように思えてくるかもしれないが、余分な機能をそぎ落としたマシンは組む・所有するだけでもかなり楽しいものだ。CPUが低発熱なのに加え電源ユニットもACアダプターが主になるため、静音性も高くなる。もちろんCPUに「C7」が嫌ならノート用の「Core 2 Duo」を搭載可能なマザーを“足で探して”みたり、HDDのかわりにSSDを搭載してみたり、USBメモリーに入るLinuxで運用してみたりといったマニアックな面での楽しみもある。変わったサブマシンが欲しい人なら、ぜひとも一度試して欲しい。
 以上がMini-ITX等のスモールフォームファクターを使うための基礎知識と覚悟になる。それでは実際のケースをチェックすることにしよう!

スッキリとスマートに組む!

PROCASE-mini CrysTa
作業時間:15分

 まず手始めにMini-ITXマザー用の「PROCASE-mini CrysTa」を紹介しよう。大きさは21cm×6.5cm×27.5cm(それぞれお縦置き時のタテ、ヨコ、奥行き)。ちょっと厚めの漫画雑誌を想像してもらえるとわかりやすいだろう。

PROCASE-mini CrysTa

縦置きも横置きもOKなMini-ITXケース「PROCASE-mini CrysTa」

 薄型設計であるため光学ドライブはノート用薄型、HDDは2.5インチに限定されてしまう。本体の厚み半分程度はドライブベイ用に取られてしまうため、このマザーは実質的にVIAのC7等を搭載した「EPIA」「EPIA-M」ファミリーのマザー専用と考えた方がよいだろう。

引き出す

ケースの設計はコの字型の外板とシャーシを分離するだけの簡単な構造。シャーシには薄型の光学ドライブと2.5インチHDDを固定するベイが装着されているが、これもネジで簡単に分離できる

マザー組み込んだ状態

マザーを組み込んだ状態。EPIAファミリーを狙い撃ちしたケースだけあって、スイッチやLED等のケーブルの長さはジャストフィット。むしろ光学ドライブの接続に使うIDEケーブルの取り回しに悩むことだろう。作業時間のほとんどはこのケーブル回しをどうやろうかと試行錯誤している時間に充てられるはずだ

ACアダプター

電源は付属のACアダプター(12V6.6A)から供給する。本体の側面のファン(6cm)は片側のみ、排気用が設置されている。タテ置きにする場合はファンを上にして設置する格好になる

本体裏

今回は1.2GHz動作のC7をオンボードで搭載するマザー「EPIA-EN12000E」を載せてみた。小さい基板の割にPS/2、アナログVGAにUSB、そしてサウンドと必須デバイスは全て揃っていることがわかるだろう。右端はACアダプター用の端子だ

冷却ファンの寿命次第?

 Mini-ITX用としては現時点で最小の部類に入るが、組み立てのしやすさは非常に優れている。唯一光学ドライブのケーブル回しが難所だが、光学ドライブを内蔵しない(外付けで代用する)という選択をすればものの10分ほどで作業が終わってしまうだろう。
 使っていて特に不満点はないのだが、ちょっと心配なのはケースに1基だけ搭載されている排気ファンの存在。特別騒々しいというわけではないが、やはり1基だけでは何かあった時に不安が残る。特にこれを常時起動のサーバー的マシンに仕立てる場合は、2基めのファンが欲しくなるだろう。

(次ページへ続く)

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