本連載では、ビジネス書評家・土井英司が、毎月のビジネス書ランキングを分析し、現在のベストセラーから未来のビジネストレンドを解説する。
ビジネスのヒントは“短時間の有効活用”
2008年2月 ビジネス書ベスト10 | |
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1位 | 脳を活かす勉強法 |
2位 | 効率が10倍アップする新・知的生産術 |
3位 | 「1日30分」を続けなさい! |
4位 | 地頭力を鍛える |
5位 | 「残業ゼロ」の仕事力 |
6位 | 100%幸せな1%の人々 |
7位 | 自分を浄化する方法 |
8位 | 「朝30分」を続けなさい! |
9位 | スタバではグランデを買え! |
10位 | 「1秒!」で財務諸表を読む方法 |
みなさんこんにちは、土井英司です。
最近、「ワークライフバランス」という言葉が話題になっていますね。これは、今最もビジネス書で売れている著者の勝間和代さんや、元資生堂の小室淑恵さんなどが唱えている概念で、小室さんの著書『新しい人事戦略ワークライフバランス』(日本能率協会マネジメントセンター)によると、「私生活の充実により仕事がうまく進み」「仕事がうまくいくことによって私生活も潤う」相乗効果のしくみと考え方を指すようです。
「ワークライフバランス」という言葉自体はパンチに欠けるため、それがタイトルになって売れている本はほとんどありませんが、実質的にワークライフバランスを論じた本は数多く出ています。
その中でも最も売れているのは、今月のビジネス書ランキングでも5位に輝いた『「残業ゼロ」の仕事力』(日本能率協会マネジメントセンター)。残業なしで19期連続増収増益、売上5倍を達成した下着メーカーのトリンプ元社長 吉越浩一郎さんによる注目の一冊です。
同氏の講演テーマでも最も人気が高いという「残業を減らす」をテーマに、効率の良い仕事や会議のやり方、強いチームの作り方を説いた、まさに今の日本のビジネスパーソンにピッタリの内容。どうすれば社員が時間密度を濃くし、やりがいを持って働けるか、そのためにマネジメントがどんな仕組みやコミュニケーションを実現すればいいかを明確に説いています。実際、私も経営者の一人として、オフィスレイアウトの方法や会議の方法など、実に参考になりました。
また、今後、同テーマでランキングに入ってきそうなタイトルとして、勝間和代さんの『勝間和代のインディペンデントな生き方実践ガイド』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が挙げられます。
こちらは働く女性の考え方を知るための書として注目。女性の社会進出が本格化するなか、仕事と子育ての両立が大きな課題となっています。企業側としても、今後の発展を支える女性を支援するのが必要不可欠。そういう意味で「ワークライフバランス」は経営者・マネジャーならぜひ学んでおくべきです。
2月のベストセラーランキングを見てみると、コンサルタント小宮一慶さんの『「1秒!」で財務諸表を読む方法』(東洋経済新報社)が第10位、メルマガアフィリエイター川島和正さんの『働かないで年収5160万円稼ぐ方法』(アスコム)が第16位にランクインするなど、忙しい中でも、なるべく手軽に学んだり、稼いだりしたいという欲求をズバリ見抜いた本が売れています。これは「少しでも時間を有効活用し、生活にゆとりを持ちたい」という読者のニーズを反映した結果と言えます。
これからは人々の細切れの時間を使って、手軽に学べたり、心を癒してくれたりといった、短い時間を有効活用できるサービスが受けるはずです。現在提供しているサービスに、何か時間を節約する要素を加えられないかどうか、ぜひ検討してみてください。
2008年2月 ビジネス書ベスト10 |
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脳を活かす勉強法 | |
茂木健一郎(PHP研究所) | |
効率が10倍アップする新・知的生産術 | |
勝間和代(ダイヤモンド社) | |
「1日30分」を続けなさい! | |
古市幸雄(マガジンハウス) | |
地頭力を鍛える | |
細谷功(東洋経済新報社) | |
「残業ゼロ」の仕事力 | |
吉越浩一郎(日本能率協会マネジメントセンター) | |
100%幸せな1%の人々 | |
小林正観(中経出版) | |
自分を浄化する方法 | |
矢尾こと葉(かんき出版) | |
「朝30分」を続けなさい! | |
古市幸雄(アスコム) | |
スタバではグランデを買え! | |
吉本佳生(ダイヤモンド社) | |
「1秒!」で財務諸表を読む方法 | |
小宮一慶(東洋経済新報社) | |
世界一やさしい問題解決の授業 | |
渡辺健介(ダイヤモンド社) | |
無法バブルマネ-終わりの始まり | |
松藤民輔(講談社) | |
私のFXバイブル | |
田平雅哉(ダイヤモンド社) | |
環境問題はなぜウソがまかり通るのか2 | |
武田邦彦(洋泉社) | |
佐藤可士和の超整理術 | |
佐藤可士和(日本経済新聞社) | |
働かないで年収5160万円稼ぐ方法 | |
川島和正(アスコム) | |
環境問題はなぜウソがまかり通るのか | |
武田邦彦(洋泉社) | |
知識ゼロからの経済学入門 | |
弘兼憲史(幻冬舎) | |
学校の勉強だけではメシは食えない! | |
岡野雅行(こう書房) | |
仕事が10倍速くなるすごい!法 | |
松本幸夫(三笠書房) |
(日販オープンネットワーク調べによるビジネス書に絞ったランキング。集計期間は2008年2月1日~2月29日)
土井 英司 (どい えいじ)
ビジネス書評家 / 出版マーケティングコンサルタント / メルマガ「ビジネスブックマラソン」編集長
慶應義塾大学総合政策学部卒。日経ホーム出版社を経て、2000年にAmazon.co.jp立ち上げに参画。 ビジネス・実用書の「陰の仕掛け人」として、『ユダヤ人大富豪の教え』(本田健・著、40万部突破)を始め、数々のベストセラーのきっかけを作った。近著に『「伝説の社員」になれ!』(草思社)がある
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