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大切なのは法ではなく、教育だ

ネットの「有害情報」に対し、親はどう対応すべきか──小寺信良に聞く

2008年04月12日 20時19分更新

文● トレンド編集部、語り●小寺信良

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本当にフィルタリングで「健全な育成」が実現する?


── それでも、フィルタリングを適用すれば、起こるかもしれない不幸な事故を防げませんかね?

小寺 この法案の最大の目的は、「青少年の健全な育成に寄与する」というところにありますが、フィルタリングを強化してもそこには着地できないと思います。

 情報の有害性というのは、情報を見た瞬間に発生するのではなく、それを有害と知らずに実行するときに生まれることが多いです。それがなぜ有害なのか分かっていないと、18歳以上になって有害情報に出会ってしまったときに、今度は自らが有害情報の媒介者になってしまう。大切なのは、なぜ有害かを教えることなんです。


── いわゆるエログロ系の、見ただけでショックを受けてしまう有害情報もあります。

小寺 それは有害情報を十把一絡げにして、何の分類もしていないから議論が混乱するんです。詐欺などのサイトは、ひと目見ただけではその有害性はわかりませんが、ダイレクトに犯罪につながるようなサイトなら、そもそも閉鎖させるなどの法的体制に持っていくべきでしょう。

 その一方で、有害と芸術の狭間にあるものもあります。あるいは報道の延長であるのかもしれません。それらは実社会でも表現の自由を巡って裁判で争うのに、ネット上は怪しいというだけで一律ダメなんでしょうか。

ASCII.jp

「アキバ(裏)」のトップページ。ASCII.jpごと規制されてしまうとは、人ごとではない!

 今、ケータイにおけるフィルタリング原則化でも、一部に掲示板などコミュニケーション機能を持つだけで、サイト丸ごとアクセスを遮断されてしまうという状況が起こっています。PC向けフィルタリングが始まれば、「アキバ(裏)」のようなきわどいコンテンツがあるASCII.jpも、まるごとアウトでしょう。

 法律による規制は、始めてしまえばすぐに何らかの影響が出ます。しかし、現状ではケータイのフィルタリング原則化も始まったばかりで、フィルタリングで未成年者の犯罪率が減ったとかいうデータもまだ取れてない。どうもやり方が性急すぎる気がします。

 現状の、未成年者の前にただ壁を立てるだけという方法は、よく分からないから問題を先送りしているだけですよね。単に臭いモノに蓋をするというのでは、ネット全体の健全化には繋がりません。ネットが健全化することは、大人にとってもいいことなんですから、まず民間での自主規制ありきで考えるべきでしょう。



時間が解決する問題なのか?


── 仮にフィルタリングが用意されたとして、中高生の親はどんな状況に置かれるんでしょうか?

小寺 今、17、18歳の子供を持つ親は40代後半から50代でしょう。この世代は自分の若いときにパソコンやケータイ、インターネットが世の中に存在していたわけではありません。最近になってその存在を知って、ようやく少し慣れてきたぐらいですから、ネットコミュニティーへの理解度はそれほど高くない。だから、ネットの有害情報に対して親自身が手を打てないという問題は、これから先、5年、10年間くらいの間は引っ張ると思います。

 今フィルタリングを実施にしても、実際にそれの設定やメンテナンスをするのは、子供ではなく親です。しかし、今の親御さんでは、子供に不満を感じさせないようにカスタマイズするのは難しいでしょう。

 世代が経過して、パソコンやケータイ、ネットに慣れた世代が親になっていけば解決する問題ではあるのですが、今やるべきことは、不慣れなテクノロジーを振り回して手当するよりも、今の親が子供に世間の仕組みを教えられるよう、一般常識とネットの常識をすりあわせていく作業です。

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