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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 第10回

2011年、地デジに完全移行する方法

2008年04月01日 09時15分更新

文● 池田信夫(経済学者)

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ホワイトスペースは空いている


 他方、先週グーグルはFCCに公開書簡を送り、テレビ局が占有しているが使っていない「ホワイトスペース」を免許なしで使用できる無線機に開放することを求めた。使われていない周波数を検知して通信する技術や、地域ごとに使われている周波数のデータベースによって周波数を変更する技術などを利用すれば、テレビの電波に干渉を起さないでWi-Fiなどが使える、とグーグルは主張している。

 日本の場合、地上デジタル放送には470〜710MHzの240MHz(40チャンネル)も割り当てられているが、いちばん混んでいる首都圏でも、NHKと民放あわせて7チャンネル。独立系UHF局などを入れても、各都県ごとに10チャンネル(60MHz)しか使われていない。

 今はアナログ放送が残っているので干渉の問題があるが、アナログ放送が止まれば、デジタル放送との干渉はグーグルの提案しているような技術で避けることができるので、残りの30チャンネル(180MHz)がホワイトスペースになる。これは莫大な帯域だ。前に述べたように、米国では100MHzに2兆円(1MHzあたり200億円)の価格が付いた。



デジタルチューナーのオークションを


 そこで私が提案したいのは、このデジタルチューナーの経費をホワイトスペースへの新規参入者に負担させるオークションだ。4000億円で180MHzが使えるなら、コストは米国の1割程度ですむ(1MHzあたり22億円)。これは周波数オークションではなく、政府の資産(デジタルチューナー)を競売にかける普通の手続きだ。

 「テレビ局の立ち退き料を新規参入業者に負担させるのは不公平だ」という批判もあろう。しかしこのまま放置すると、アナログ放送は半永久的に続けなければならず、新規参入も困難だ。放送局に補助金を出すことによって、ホワイトスペースで新しい産業が生まれるなら、数兆円の価値を生み出すことができよう。しかも公的な負担は生じない。

 これはテレビ局にとってはサイマル放送(デジタル/アナログ同時放送)の負担をなくし、総務省にとってはデジタルチューナーの財源が確保でき、消費者にとっても全国民が地デジを見られるようになり、予定どおり2011年に地デジに完全移行できる。すべての人々にとってハッピーな解決策だと思うのだが、どうだろうか。


筆者紹介──池田信夫


1953年京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。1993年退職後。国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は上武大学大学院経営管理研究科教授。学術博士(慶應義塾大学)。著書に「過剰と破壊の経済学」(アスキー)、「情報技術と組織のアーキテクチャ」(NTT出版)、「電波利権」(新潮新書)、「ウェブは資本主義を超える」(日経BP社)など。自身のブログは「池田信夫blog」。



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