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HDDとSSDの“いいとこ取り”デバイス

パソコンを安価に高速化する魔法の1枚

2008年03月28日 00時00分更新

文● 石井英男 写真●曽根田 元

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月刊アスキー 2008年5月号掲載記事

ヴォルターディスク

「ヴォルターディスク」。Mini PCIモジュールとして提供されるヴォルターディスクには、8GB/12GB/16GBの3種類の容量が用意される(Windows Vistaを格納するには12~16GBが必要)。ヴォルターディスク搭載システムでは、OSの起動が34%高速化され、「SYSMark2007」(パソコンのパフォーマンスを測定するベンチマークプログラム)のスコアも25%向上するという。

最新のパソコンを使っていても、OSやアプリケーションの起動が遅いと感じる場面は少なくない。

この主な原因は、HDDからのファイルの読み込みに時間がかかるためだ。HDDは機械的に動作する部品であり、メモリのような電気的に動作する部品に比べて、はるかに動作速度が遅い。CPUの性能がいくら向上しても、HDDが足を引っ張ってしまえば、パソコンの抜本的なレスポンス向上は見込めない。

そこで、最近はHDDの代わりに「SSD」を採用したパソコンが登場している。SSDはフラッシュメモリにデータを記録するもので、アクセス速度(特にランダムな読み出し)が高速なことが利点だ。しかし、SSDはHDDに比べてコストが高く、容量も現時点では最大64GB程度に限られる欠点がある。

そうした状況の中、米サンディスクは「ヴォルターディスク」を開発した。ヴォルターディスクとは、フラッシュメモリを利用した新コンセプトのストレージで、HDDと組み合わせて使うように設計されている。

ドリー・オレン氏

米サンディスク コンピューティングソリューションズディビジョン プロダクトマーケティング・ディレクター ドリー・オレン氏。SSDとの棲み分けについては、「ヴォルターディスクはコンシューマ製品に最適なソリューションであり、SSDは当面は企業・ハイエンド向け」と考えているという。

フラッシュメモリを利用したHDD高速化技術としては、インテルの「ターボ・メモリ」やマイクロソフトの「ReadyBoost(レディブースト)」などがすでにあるが、これらは基本的にフラッシュメモリをキャッシュとして使うのに対し、ヴォルターディスクはOS専用のドライブとして動作することがポイントだ。

ヴォルターディスクのコンセプトは、アプリケーションやデータは容量あたりのコストが安いHDDに格納し、OSのシステムファイルはヴォルターディスクに格納することで、全体のパフォーマンスを高めようというもの。いわばHDDとSSDの“いいとこ取り”を狙った技術だ。

ウィンドウズは、起動時に多数の「DLLファイル」と呼ばれる小さいプログラムファイルを読み込むため、ヴォルターディスクで起動時間を大幅に短縮できる。また、一般的なアプリケーションも、起動時にウィンドウズのDLLを多数読み込むので、こちらも起動が高速化される。

ただし、ヴォルターディスクはユーザーが自分でパソコンに挿せるものではない。ユーザーからヴォルターディスクの内部が見えるか否かなども含めて、細かい部分の実装は、採用するパソコンメーカーの判断にゆだねられる。

量産開始は2008年前半を予定しており、今年の後半には、搭載ノートパソコンが登場することになりそうだ。

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