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「コメントは一覧できるべき」という思想

津田大介が伊藤直也に聞く、「はてなブックマーク」の今と未来(前編)

2008年03月25日 12時45分更新

文● 津田大介(ジャーナリスト)

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「コメントは一覧できるべき」


津田氏

津田大介氏

── 最初は伊藤さんが「ユーザーにとってコメントを一覧できれば便利だろう」と思って導入したコメント一覧ページですが、ページの位置付けについてはさまざまな議論がありましたよね。

 端的な例で言えば、ネタ的に自分の気に入らないエントリーについて「死ねばいいのに」というタグを付けるユーザーがいて、今はそれがある種はてなブックマークの一部のユーザーに「作法」として定着しています。元々は単なるネタ的なネットジャーゴン(隠語)だったのかもしれないですが、ブックマークのように対象となるブログ著者と直接接続されるような空間にそういう言葉が並んでいると池田信夫さんのように、自分に対する侮辱と捉える人も出てきます。

 あとは、一時期話題になったはてなブックマークから無断リンクされることを嫌がる人なんかは典型的ですが、一般的な常識や規範から外れたある種の極論を言う人に対して、はてなブックマークユーザーがエントリーページを使って過剰に揶揄したり、暴言を投げかけてコメント一覧がそれで埋め尽くされてしまうみたいなことは結構頻繁にありますよね。

 ネガティブコメントの問題は、コメント機能が付いてから割とすぐに顕在化していました。そのときに僕が思ったのは、「自分用のメモ」として使っている人が多いんだったら、自分のコメントを自分のページだけでしか見られないようにするとか、エントリーページには個々のコメントは非表示にして、エントリーページのユーザーIDをクリックしてそのIDのブックマーク一覧ページまで行ったら、はてなダイアリーと同じような形でコメントを見られるようにするとか、何らかの「クッション」を置いたほうがいいということです。

 割れ窓理論的に荒れがちになるし、叩かれる対象となっているユーザーも精神的な負担になっちゃうケースがあるんじゃないかと。「インターネットはそういうものだ」と言ってしまえばそうなのかもしれませんが、そういう負担を「はてな外」の人に一方的にコストとして押しつけるのは、運営側の管理責任としてどうなんだろうと、ああいう騒ぎが起きるたびに感じています。

伊藤 そうですね。確かに「何らかのクッションを置いた方がいいんじゃないか」みたいな要望は結構いただきました。


── いろいろ検討事項もあったのでしょうが、結果的には今の形を継続していますよね。僕はそれは開発者の伊藤さんなり、はてなという会社が「このサービスはこうあるべきだ」という信念を持っていたから、あえて今の形にしたように思えます。何か哲学的な背景があれば教えてください。

伊藤氏

伊藤直也氏

伊藤 おっしゃる通りで、一番は自分の中で「はてなブックマークをどうしたいのか」という基本的なスタンスを考えてみたときに「コメントは一覧できるべきだ」と思ったことが大きいんです。

 ぶっちゃけ、作った当初は単なるツールのつもりだったんですけど、だんだんサービスを見ているうちに、はてなブックマークがもたらす別の可能性に気が付きました。今は積極的にインターネットがもたらす「メディアとしての価値」をはてなブックマークにもっと持たせたいと思ってるんです。

 批判であれ、賛同であれ、その記事やエントリーに対するユーザーさんの感想みたいなものはネット上では「見られてしかるべき」と僕は思ってるんですよ。それを見るために、あるいは見たいと思っている人にワンクッション置くというのは単純に便利じゃない。そもそもそんなたくさんクリックしなくちゃいけなかったら、「見たいと思ってる感想にたどり着けないよ」というところがありますね。

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