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日立とMITメディアラボの共同研究

知識労働の生産性を上げるにはやっぱり話さないとダメ

2008年03月25日 00時00分更新

文● 増田祥子(編集部)

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月刊アスキー 2008年4月号掲載記事

 上司や同僚と直接話をしないと仕事のミスにつながるとはわかっていても、忙しくなるとついついコミュニケーションがおろそかになってしまうもの。日立製作所とマサチューセッツ工科大学(MIT)は、多くの知識労働者が抱えるこの問題を解決すべく、共同研究を行っている。1月17日に東京・六本木で行われた「MITメディアLAB」では、両者の代表が最新の研究成果を発表した。

仕事のミスの原因が明らかに

日立のビジネス顕微鏡開発チームでシステムにバグが発生した際に、集積データの一部を会議室の壁に張り出して反省会を行ったところ、各社員が多忙で定例会議が行えなくなった直後に問題が起きたことが明らかになった。表は、色分けされた社員(縦軸)がほかの社員と対面していた時間(横軸)を1日ごとに示したもの。

 日立・中央研究所の矢野和男氏が提唱する「ビジネス顕微鏡」は、センサーを身に付けた人同士が、いつ、どこで、誰と、どのようなコミュニケーションをとったかに関するデータを取得。それを可視化することで「気付き」を与え、個人の成長、さらにはチームパフォーマンスの向上につなげるというものだ。データ分析や可視化、マネジメント分析に、MITのノウハウが生かされている。

社員の対面データを集積

日立が開発した「名札型センサネット端末」。対面コミュニケーションを検出する赤外線送受信機、人と人との距離を測る無線通信機、大まかな人の動きがわかる三軸加速度計、声のトーンから話者の興奮度を割り出すためのマイクなどを備える。

 日立とMITでは、カスタマーサポート、セールスサポート、銀行、病院などで実証実験を行ってきたほか、日立内でも昨年1月以降、100名規模の実験を実施。これまでに、数億パターンもの知識労働者の行動特性に関するデータを入手した。これらのデータを分析することで、生産性を上げるためのキーポイントが見つかると見込んでおり、2008年度のサービストライアル開始を目指して開発を進めている。

 「普及のためには、人の生活や感情に与える影響を考慮しなければなりません」と、矢野氏は語る。「特定の人だけがデータを見られるような監視的な状態を作るのではなく、全員が全員の業務を見ることで、協力しやすい職場にすることへの理解が必要です」。

 コミュニケーションの手段が増え、メールやチャットなどのログを残すことが当たり前になった現代、生身の人間の対面を探ることが、コミュニケーション不足を解消する糸口なのかもしれない。

MITのウェーバー氏
日立の早川氏

1月17日に東京で行われたMITメディアLABで、研究発表を行った日立製作所 中央研究所 基礎研究所の早川 幹(みき)氏(右)とMITメディアラボ ヒューマン・ダイナミクス・グループのベンジャミン・ウェーバー氏(左)。

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