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「未踏ソフトウェア」海外進出支援事業(その1)

IT再生の「のろし」を上げよ!──シリコンバレーに切り込んだ八人の侍

2008年03月11日 23時30分更新

文● 林信行(ITジャーナリスト)

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ベンチャーの心構えを伝える古川「団長」


 スタンフォード大学の特別記念講演の冒頭を飾ったのは、古川氏だ。

古川氏

古川氏

 今回の米国訪問では、参加者から「団長」と呼ばれ親しまれており、自ら10人乗りのバンのドライバーを買って出て、スーパークリエイターたちを目的地まで連れて行ってくれている。古川氏がどれだけすごい人物かを考えると、こんな経験が得られるだけでもかなり幸せだ。

 スタンフォード大学での講演では、32歳で日本のマイクロソフトの社長に就任した自らの経験を踏まえて、まずスピード感の重要さを説いた。

 「講演などの最中に寝るのは日本人だけ」「講義を聞くならいい質問をするために、あらかじめ講演者について調べてくる」「海外を訪問するなら、その大学について調べておくべき」──。ただ誘導されるままに振る舞っていては、何も得ることができない。古川氏は、限られた米国の滞在時間を有効に活かすための心得を語る。

 続けて、自らがマイクロソフトでの仕事を通して知り合ったビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズの素顔にも触れた。

 「スティーブ・ジョブズもビル・ゲイツも、技術者としては大したことはない。だが、彼らは人からものを聞く天才であり、いいものを見極める眼力を持つ。さらに2人とも人を褒めることにかけては天才」だという。

 ビル・ゲイツは特に気になることがあれば、すぐにその場で聞くため、「一緒に秋葉原を歩くと、『あれはなんだ』、『これはなんだ』と聞かれ続けて大変」だという。

 マイクロソフト時代には、何度かゲイツとののしり合いの大げんかをしたこともあるが、ゲイツは自分が間違っていることに気がつくと、公衆の面前であっても気にせずに非を認め、謝るという。しかも、その後、間違いを認めた相手に「お前の方が詳しいから」と、その仕事を頼んでくるのだという。

 スティーブ・ジョブズというと独善的な人物と評されることも多いが、そうした独善は鋭い洞察から生まれてくるもの。「ジョブズやゲイツの振る舞いだけを表面的に真似してしてもダメだ」と古川氏は説く。

 古川氏は、何でも自分でやろうと思わず、自分が苦手なところを知るのも大事で、そうしたところはもっとうまくやれる人物を見つけて任せるのが得策だと力説する。

 古川氏も若かりし日は、何でも自分でやろうとしていたが、あるとき自分より若いプログラマーの技術に触れ、「勝てない」と感じたという。その一方でプログラムのブラシュアップやそれをプロデュースすることが自分の才能だと気付き、そのあとは積極的にいいソフト技術のプロデュース業に従事してきたとも言う。

 そういう意味では、古川氏にとってこの未踏ソフトウェアの団長役はぴったりだったと言えよう。

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