昨年12月4日、日本電気(株)とNECパーソナルプロダクツ(株)は、新しいホームサーバソリューションのブランド「Lui」(Life with Ubiquitous Integrated solutions、ルイ)を発表した(関連記事)。
テレビ番組を始めとしたデジタルコンテンツを貯めるだけでなく、Windowsアプリケーションのホストとなる「ホームサーバPC」と、フル機能のWindows Vistaをどこでも好きな場所で使えるようにするモバイル機器「PCリモーター」を組み合わせて実現する、今までにないホームサーバソリューションである。発売は2008年前半と予告されている。
「ホームサーバPC」。Windows Vista搭載のハイエンドパソコン部と、デジタル2番組録画・配信機能を持つレコーダー部を内蔵したリビングルーム向けパソコン | 「PCリモーター ノートタイプ」。10.6型ワイド液晶ディスプレーを搭載するノートパソコン型端末 | 「PCリモーター ポケットタイプ」。タッチパネル式の4.1型ワイド液晶ディスプレーを備えるポケットタイプ端末 |
NECパーソナルプロダクツ ユビキタス事業開発本部長の栗山浩一氏 |
一般的なパソコンやホームサーバの概念とは異なる特徴を持つLuiでは何ができるのか? NECはLuiによって、何を実現しようとしているのか? アスキーCCOの遠藤 諭が、NECパーソナルプロダクツにてLuiの事業を手がけるユビキタス事業開発本部長の栗山浩一氏にインタビューを行ない、Luiの試作機に触れながらNECの狙いについて聞いた。
遠藤、Luiを体験す
まずインタビューに先立ち、遠藤は栗山氏の説明を受けながら、Luiを実際に体験してみることにした。前述のとおり、Luiはデジタル放送録画機能を持つホームサーバPCと、ノートタイプあるいはポケットタイプのPCリモーターで構成される製品だ。
「Lui」で実現されるホームサーバの世界。NECでは図の上側の利用シーンを「コンテンツオンデマンド」、図の下側の利用シーンを「PCオンデマンド」と呼んでいる |
ホームサーバPCはデジタル放送の2番組同時録画と、ネットワーク経由での2番組同時配信の機能を持つ。一方のPCリモーターは、ホームサーバPC上で動いているWindows Vistaを、モバイルノートより軽いデバイス上でリモート操作する機能を持つ。
興味津々の遠藤は、まずノートタイプのPCリモーターを手に取ると、操作しながら栗山氏に次々と質問を投げかけていった。
早速リモーターを触りながら、栗山氏を質問攻めにする遠藤(左) |
遠藤 LuiのPCリモーターというのは、要は無線でつながっているディスプレーと考えていいんですか?
栗山 そうです。
遠藤 これは今、どれくらいの回線速度でサーバとつながっているのでしょう?
栗山 今は無線LAN接続で、実効5~6Mbpsくらいです。WXGA(1280×768ドット)解像度の画面を送っています。
遠藤 ネットワークの帯域は、どのくらいあればストレスなく使えるんですか?
栗山 最低1Mbpsは欲しいですね。
PCリモーターはWindows上のアプリケーションやウェブサービスなら、何でも扱える。ストリーミング動画の再生も問題ない |
遠藤 YouTubeとかも平気ですか?
栗山 ぜんぜん問題ないですよ。例えば、このページの動画も……。
遠藤 ほう! 動画もFlashかWindows Mediaかといったことは、関係ないわけですね。
栗山 関係なく見られますね。
遠藤 PCリモーターの画面は、サーバの中でパソコン画面のディスプレー出力をキャプチャーして、それを圧縮送信しているわけですね? 文字などはちょっとぼやけている感じですね。
栗山 画面全体を常時キャプチャーして送っているのではなく、画面で変化があったところを矩形で切り出して、そこを圧縮して送っています。変化がないところはそのまま。だからマウスカーソルだけ動かすと、カーソルのまわりの何ピクセルかが送られるわけです。
「動き優先」「画質優先」というパラメータと、回線速度に応じてパラメータテーブルを変えるという機能があります。操作性を重視したい場合、画質を重視したい場合など選べるようになっています。
単純な真っ白いExcelの表のようなものであれば、圧縮率は高くなります。たくさんの花のような画像では圧縮率が低くなるので、やや画質を落とすという具合です。
遠藤 家庭に置くサーバ側には、固定IPアドレスがなくてもいいんですね。
栗山 そうです。固定IPはもちろん、ダイナミックDNSなど新たなサービスを必要としないというのも、今回工夫したところですね。ホームサーバPCのIPアドレスの問題解決に、「メール交換方式」という技術を使っているためです。
遠藤 PCリモーターのインターネットへの接続手段は、無線LANだけですか?
栗山 無線LANと有線LANです。それ以外にインターフェースとしては、USB、SDカードとCFカードのスロットがあります。
ノートタイプの左側面。CFカードスロットを備える。なお、背面にはUSBとLAN端子がある | ノートタイプの右側面。SDカードスロット、ヘッドホン出力、USB端子などが並ぶ |
遠藤 そこにデータカードをつなげば、通信もさせられそうですね。
栗山 専用のドライバー等を準備しなくてはならない面もありますが。
遠藤 デジカメの画像なんかは、PCリモーターのSDカードスロットに入れて使えないんですか。
栗山 使えますよ。リモーター側にファイル転送ユーティリティが入ってます。
遠藤 なるほど。リモーターのスロットが、直接にサーバのドライブになるわけではないんですね。
栗山 こちらのホームサーバPCの方は、大画面テレビにつながるパソコン機能と、デジタル放送のレコーダー機能を分離して搭載したという商品です。
遠藤 この中にパソコンとレコーダーがそれぞれ入っているわけですか。
栗山 そうです。中はLANで結ばれ、それらがひとつの筐体に入っているという形です。安定して動かすために独立した構造にしたという点が、大きな特徴です。そうすることによって、パソコンそのものの安定性と録画の安定性を両立させた。
どうしてもテレビパソコンですと、パソコン側の原因で録画失敗が起こったり、録画・配信時には大きな負荷がかかる。そこを安定させようと、パソコンを普通に使いながら裏でデジタル放送を2番組同時録画して、録画番組の2番組同時配信が可能なものを作り上げました。