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「パソコン」から「オーディオ」の世界に進んだ理由──西和彦氏に聞く

2008年03月03日 18時00分更新

文● 編集部、写真●小林 伸

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独創的なつくりで実現された繊細で見通しのいい音


D-1aとB-1a

写真の上段に並べられているのが第1弾の製品となるD/Aコンバーター。MSB Technology社のマルチビットDACを4基搭載。光・同軸の入力に加え、Eternetで利用されるCAT5のケーブルを接続する端子も備えている。SACDを再生する際には、プレーヤー側でSACDのDSD信号をマルチビットのPCM信号に変換したものをDACで受ける。右下のプレーヤーは市販品をそのために改造したもの

 試聴室では5月から出荷されるD/Aコンバーター「D-1a」(157万5000円)と直流A級パワーアンプ「B-1a」(価格105万円)にJBLのEVERESTを組み合わせたデモを聴くことができた。

 送り出しの部分は市販のユニバーサルプレーヤーを改造したもので、DSPを利用してSACDのDSD信号をマルチビットのPCM信号に変換。Ethernetで用いられるCAT5のケーブルを使ってD/Aコンバーターに伝送する仕組みになっている。D/Aコンバーターは音量調整用の回路を内蔵しており、プリアンプを介さずパワーアンプに直結できる。音の鮮度に差が出るという。

パワーアンプのB-1aでは、特徴的なヒートシンクがひときわ目を引く。トランジスターをモチーフにしたものだが、最初は左下の写真のように直線を主体とした幾何学的な形状だった。しかし、しゃぶしゃぶ鍋を見ていたときに「ひらめき」があり、現在の形状となった。加工業者にはすでに発注済みだったが、急遽西氏自身がペイントソフトで図面を書き、デザインを変更したのだという

 最初に演奏されたのはリヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」だ。スタンリー・キューブリックの映画「2001年宇宙の旅」の冒頭でかかる有名な曲である。序奏部分は、まるで地の底から湧き上がってくるような低いパイプオルガンの音から始まる。この再現は難しく、オーディオ機器の資質が問われる部分だ。一般的なオーディオシステムではかすかに鳴っている気配を感じる程度という場合も少なくないが、視聴室は地響きにも似た深い振動に満たされた。

 音を言葉で表現するのは難しいが、同席していた女性編集者がこの音にかなりの衝撃を受けたのは確かだ。彼女は大学時代オーケストラに所属しており、生音の素晴らしさを知っているだけに、当初は1台で100万円以上もするオーディオ機器に懐疑的な様子だった。しかし、この音を聴いた瞬間に顔色が変わり、取材の帰路には初めて触れたハイエンドオーディオの魅力を興奮気味に語るようになっていた。

D/Aコンバーターに採用されているMSB Technology製のマルチビットDAC(左上)。デジタル部分、アナログ部分など、各モジュールを分離して干渉を防いでいる(右上)。外部GPSクロックを利用して精度を高めることもできる(左下)

 D/Aコンバーター、パワーアンプともに現状では最終的な調整段階で、まだまだ改善の余地がある。「低音はもっと良くなる。やるべきことは大体分かっている」と、西氏も完成度の向上に自信を示していた。

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