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HD DVD終息の今、やっぱり見直すべき

小寺信良氏に聞く「ダビング10って、何が問題なんですか?」

2008年02月23日 16時49分更新

文● 編集部、語り●小寺信良

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今のビジネスモデルを維持したい放送業界

 

── そもそも、なぜ日本はダビング10にこだわるのでしょうか?

小寺 大きな要因は、放送業界が今のビジネスモデルを維持したいと考えているところにあります。

 他の先進諸国と比べると、日本のメディアバランスは放送に偏っている。映像業界はテレビに依存していて、広告もテレビに大半が投じられている(関連記事)。だから、コンテンツの露出における主導権を握って、現状を維持したいという意志がとても強い。

 これまで日本の放送業界は、「テレビのコンテンツは1度放送したら終わりで、もう一度見たかったらDVDなどのパッケージを買ってよ」というビジネスモデルでやってきた。一度作ったコンテンツで最大の利益を得るために、コンテンツに対する飢餓感を創出して、購買に結びつけるいう方針です。

 

── 他国の放送業界は、どういう方針をとっていますか?

小寺 米国などでは「ワンソース・マルチユースのほうが儲かる」という流れになってきています。いろいろなチャンネルに露出を増やして、同じコンテンツをメディアを変えて何度も売る。それに加えて目新しいネット配信にいち早く対応することで、制作会社や放送局の株価を上げて、資金を集めることもできる。

 事情は違いますがネットに積極的なのが、英国の国営放送であるBBCです。BBCについては、過去に「なぜ放送局を国民の税金で運営しなければいけないのか」という議論が何度も出ていて、繰り返し崩壊の危機にさらされてきた。国営でなければできないような新しいことに取り組まないとつぶされてしまうため、ネット配信も積極的に始めています。

 ちなみにブログでもちょっと触れましたが、月周回衛星「かぐや」(SELENE)が撮影した「地球の出」のハイビジョン映像についても、国内外で大きく扱い方が違いますよね(関連リンク)。

 かぐやは日本の税金で打ち上げられた衛星で、この映像を撮ったハイビジョンカメラも国民の受信料でNHKが開発したものです。人類の共有財産とも言うべき貴重な映像なのに、NHKは小出しに放送しただけで、あとはパッケージメディア、しかもHD DVDで売ろうとした(後に発売中止)。

 一方で、この映像はカナダのディスカバリーチャンネルにもライセンスされていて、実はウェブサイトでハイビジョンの映像が公開されていたりします。日本からアクセスして再生しようとすると、ブロックされますけどね(笑)。

ブロックされてしまう

カナダのディスカバリーチャンネルでは「HD Earthrise」と題して「地球の出」のハイビジョン映像を公開しているが、日本からアクセスしてもブロックされる

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