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松岡美樹の“深読みインターネット” 第7回

あなたのコメントが相手に火をつけるネットの原理

2008年02月16日 16時46分更新

文● 松岡美樹

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何気ない揶揄や嫌味が「負の拡大解釈」を招く


 では一方、情報の送り手の側は何を心がければいいのか?

 繰り返しになるが、ネット上のコミュニケーションでは五感をすべて使えないため、人間は疑い、悪く解釈する方向に判断が流れやすい。そんなネットの原理を踏まえた上で、誤解されない書き方をする必要がある。

 例えばあなたに悪意はなくても、そこに揶揄するかのような表現が含まれていれば、相手はたちまち拡大解釈すると思っておいたほうがいい。あなたにそんな意思がないなら悪く取られるぶんソンなだけだ。

 また「ちょっとした嫌味」もクセモノである。

 相手を攻撃するつもりはないのに、何の気なしについ嫌味を書いてしまう。はずみや勢いでひとこと嫌味を付け足してしまう。で、読んだ相手からヒステリックな(過剰)反応が返ってきて初めて、「えっ、自分にはそんなつもりはなかったのに」とハッとする。ネット上ではよくあることだ。

 揶揄も嫌味も、誹謗中傷というほど強いものじゃない。だからこそ逆に始末が悪い。「誹謗中傷はいけない」というのはネットユーザの意識に植え付けられているが、揶揄や嫌味は「その手前だから」と軽い気持ちでやってしまいがちだからだ。

 例えばネット・コミュニケーション全般ではなくSBMのコメントに限って言えば、誹謗中傷などはむしろ少なく、ささいな揶揄や何の気なしの嫌味が読み手に「イヤな感じ」を与えているケースのほうが多いのではないだろうか?

 ちょっとした揶揄や嫌味、言い切り型のキツく感じる短い表現。ネット上では、これらはただでさえ誤解の元になる。

 それに加えて相手に反対意見を表明することは正当な行為だが、受け取る人によっては感情的な反発を生みやすい。

 これら2つの要素が重なれば、曲解されやすい度合いはますますアップしてしまう。

 とすれば特に相手に異論を述べ、生産的な議論をしたい場合には、意味のない過剰反応や感情のもつれを呼びやすい表現は避けたほうがいい。「軽いジャブで炎上させてやろう」なんていう意図があなたにないのであれば、それらは百害あって一利なしだ。

 書き方の問題は実に大きいのである。

松岡美樹(まつおかみき)


文筆家、ネットメディア・アナリスト。ブログやmixi、ソーシャルブックマーク(SBM)などのネットメディアを利用する人間の心理分析や、ネット上で起こる炎上などの社会現象・ブームの分析に定評がある。著書に『ニッポンの挑戦 インターネットの夜明け』(RBB PRESS/オーム社)など。自身のブログ「すちゃらかな日常 松岡美樹」も運営している。


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