月刊アスキー 2008年3月号掲載記事
エンタテインメント大国として名を馳せたアメリカは9.11以降、その創造力とともに「アメリカン・ドリーム」もなくしたと言われる。映画産業もしかり。脚本からは夢やオリジナリティが失われ、ヒットする作品はアジア映画やコミックの焼き直しばかりになってしまった。
ハリウッドが直面するかつてない危機から脱出するために、ワーナーが手にした切り札、それがサッカー・ビジネスだ。ワーナー・ブラザーズ・コンシューマー・プロダクツのシニアバイスプレジデントを務めるジェフリー・ワーレン氏は、昨年12月に香港で開催されたアジア最大のデザイン・コンファレンス「Business Of Design Week 2007」の「IPアジア」会議において、「サッカーは、現在最も高い経済効果が見込めるコンテンツだ」と断言した。
ブランドからテクノロジーに及ぶIP(知的財産)戦略の実践と、そこで重要な役割を担うコンテンツ開発は、いまや企業が“クリエイティブ・エコノミー”の時代を生き残るための必須項目となった。地球上で最も人気のスポーツであるサッカーは、ファッションとのつながりも深く、選手をアイコンに起用するブランドは後を断たない。
ワーナーは、2005年のUEFA(欧州サッカー連盟)との長期ライセンス契約を皮切りに、2006 FIFA ワールドカップ・ドイツ大会、UEFAユーロ2008、ACミラン、メキシコ・ナショナルチームと、代理業を含むマスターライセンス契約を次々と締結。また、世界初のFIFA公認映画となったサッカー三部作「GOAL!」では、国際ライセンサーとして作品を“アシスト”するなど、サッカー市場をどん欲に切り開いている。
この結果、放映権を中心に、ブランドアライアンスや商品など、IPビジネスが自ずとついてくる仕組みだ。「向こう5年間のアメリカ市場での経済効果は計り知れない」(ワーレン氏)。サッカー・ビジネス参入後、10年余りで売り上げを約40倍の15億ドル規模に増幅させたナイキという好例もある。グループの「夢」をかけたワーナーのIP戦略は、見事なGOAL!を果たすのか。