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雨の月は100万PVを超える「東京アメッシュ」

人気降雨情報サイトを“下水道局”が運営する理由

2008年02月22日 23時58分更新

文● 中西祥智(編集部) 写真●吉田 武

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月刊アスキー 2008年3月号掲載記事

東京アメッシュ http://tokyo-ame.jwa.or.jp/

東京アメッシュ

お役所らしからぬキャッチーな名称は、運用開始時に職員の提案で決めた。なお、他の自治体の下水道関連部署でも、埼玉県が「アメネットさいたま」、横浜市が「レインアイよこはま」、大阪市が「大阪市都市環境局降雨情報」、神戸市が「レインマップこうべ250」を提供。

東京近辺の会社なら、帰宅時間に雨が降り始めると、社内のパソコンの多くに降雨情報サイト「東京アメッシュ」の画面が表示されているのでは?

東京アメッシュはサイトの構成がシンプルでわかりやすく、レーダー画面も大きいので、いまどこで雨が降っているのかをひと目で確認できる。雨の多い月には月間ページビューが100万を超えるなど、重宝する人は多いだろう。

東京アメッシュを手がける2人

東京アメッシュを手がける東京都下水道局 施設管理部 施設管理課 運転情報管理係長の大橋秀郎氏(左)と、同係次席の工藤 賢氏(右)

ところでこの東京アメッシュ、運営しているのはITベンチャーでも気象庁でもない。実は東京都“下水道局”だ。

なぜ下水道局がと思われるかもしれない。だが降雨情報の収集は、下水道局にとって、まさに本業の一部なのだという。

下水道の果たす役目は大きく分けて2つ。1つは、汚水・生活排水を集めて処理することだ。だが下水道にはもう1つ、雨水の排除という役目がある。

洪水を防ぐには、東京都の場合、都内に83カ所あるポンプ場を作動させるなどして、下水管に流れ込んだ雨水を適切に排水せねばならない。そして、そのためには局所的な大雨の状況を随時把握する必要がある。

レーダーサイトなど

左から、稲城市のレーダー基地局、港区のレーダー基地局、そして都内86カ所に置かれる雨量計。東京都下水道局はこれら自前の降雨レーダー2基と雨量計に加えて、近隣自治体のレーダー情報等の提供も受けて、精度の向上を図っている。

だが、気象庁の降雨情報は全国をカバーするぶん精度は1キロメートル単位であるため、細かい状況把握が難しい。そこで、下水道局は自前でレーダー等を設置し、最小で250メートル単位という精緻な観測を行うようになった。これが東京アメッシュの発端で、最初のシステムは'88年に運用を開始、2002年にはウェブや携帯電話で広く一般へ情報提供を始めた。

サイト公開は防災対策の一環であって、ここで収益を上げているわけではない。とはいえ、東京アメッシュの降雨情報は日本気象協会等へも提供されており、今後、それらの事業者からビジネスが広がるかもしれない。

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