月刊アスキー 2008年3月号掲載記事
東京アメッシュ http://tokyo-ame.jwa.or.jp/
東京近辺の会社なら、帰宅時間に雨が降り始めると、社内のパソコンの多くに降雨情報サイト「東京アメッシュ」の画面が表示されているのでは?
東京アメッシュはサイトの構成がシンプルでわかりやすく、レーダー画面も大きいので、いまどこで雨が降っているのかをひと目で確認できる。雨の多い月には月間ページビューが100万を超えるなど、重宝する人は多いだろう。
ところでこの東京アメッシュ、運営しているのはITベンチャーでも気象庁でもない。実は東京都“下水道局”だ。
なぜ下水道局がと思われるかもしれない。だが降雨情報の収集は、下水道局にとって、まさに本業の一部なのだという。
下水道の果たす役目は大きく分けて2つ。1つは、汚水・生活排水を集めて処理することだ。だが下水道にはもう1つ、雨水の排除という役目がある。
洪水を防ぐには、東京都の場合、都内に83カ所あるポンプ場を作動させるなどして、下水管に流れ込んだ雨水を適切に排水せねばならない。そして、そのためには局所的な大雨の状況を随時把握する必要がある。
だが、気象庁の降雨情報は全国をカバーするぶん精度は1キロメートル単位であるため、細かい状況把握が難しい。そこで、下水道局は自前でレーダー等を設置し、最小で250メートル単位という精緻な観測を行うようになった。これが東京アメッシュの発端で、最初のシステムは'88年に運用を開始、2002年にはウェブや携帯電話で広く一般へ情報提供を始めた。
サイト公開は防災対策の一環であって、ここで収益を上げているわけではない。とはいえ、東京アメッシュの降雨情報は日本気象協会等へも提供されており、今後、それらの事業者からビジネスが広がるかもしれない。