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日本の技術を持ち腐れにするな

佐々木俊尚が語る「未来の検索」

2008年02月14日 09時00分更新

文● 編集部、語り●佐々木俊尚(ジャーナリスト)

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日本の持つ要素技術はインターネットでも武器になる


── 新書の中では「情報大航海プロジェクト」に関しても多くの紙幅が割かれていましたが。

佐々木 情報大航海プロジェクトには関心を持っています。確かに批判も多くあり、政府主導で行なったプロジェクトで過去に成功した事例が乏しいというのも事実です。思い入れがある理由は、八尋氏という経済産業省のキーマンの才能に期待しているからです。彼を民間から中途で入省させ、課長にしたのは勇断だったと思っています。

 このプロジェクトの狙いどころもいいと思います。当初「日本のグーグルを作る」と言ってずいぶんと叩かれましたが、彼らは別にグーグルのような検索エンジンを作ろうとしているわけではない。基本にあるのは「いろいろなものを検索可能にする」ということです。例えば、リアルの世界にICタグをつけて、検索できるようにするとか、そういうイメージですね。

 グーグルが現在相手にしているのはせいぜい100億ページぐらいのウェブの世界です。しかし、世の中にデジタル化されていないデータはまだまだたくさんあります。気象状況とか、車がどこを走っているとか……。そういうものを検索可能にして新たな価値を加え、新しいビジネスに転用していく。そこには可能性があると思います。

 NEC、日立製作所、富士通といった日本の企業は組み込み系に強い。パターン認識技術といった基礎的な研究も進んでいる。いま検索エンジンの対象はテキストが中心ですが、例えばテレビ番組に誰が出ていて、何が写っているかといったものを直接検索できるような時代も遠からずやってくるでしょう。

 大企業にはそのための要素技術がたくさん眠っていますが、宝の持ち腐れになっています。それをつなぎ合わせ、ビジネスに結びつけていこうというのが、情報大航海プロジェクトの目的なんです。こういった技術をプールして、ある程度の対価を払いながらみんなが利用できるようにする。そうすれば、そこから技術を吸い上げて、新しいサービスを生み出していくベンチャーが生まれるかもしれない。

 日本の企業は知財を守ることに執着してきたので、これまでこういった仕組みを実現するのが難しかった。(アイコン操作の特許権に関して)松下電器産業がジャストシステムに訴訟を起こして失笑を買ったことは記憶に新しいと思います。しかし、「ウェブで日本の技術をどう展開していくか」を考えると、現段階でありうる選択肢は「情報大航海プロジェクト的なところしかないかな」というのが私の達した結論です。



── ウェブの世界は3ヵ月経てば様相が大きく変わってしまいます。変化のスピードについていけるのでしょうか?

佐々木 確かにトレンドを追っかけるだけでは半年も経てば古くなってしまうでしょう。例えば「Twitter」のようなものをやったとしてもダメです。しかし、プロジェクトに採択されているサービスの多くは、長期的に見ると「そっちに行くだろうな」と期待させるものが多いと思います。

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