第1回目「開発エンジニア」、第2回目「テストエンジニア」と組込み系の現場で成果を上げるためのポイントや必要なスキルを紹介してきた「組込み一直線」。第3、4回は2回にわたり、開発エンジニアやテストエンジニアが目指すキャリアの1つである「プロジェクトマネージャー」を取り上げます。組込み系の特徴であるコンカレントな開発現場で、プロジェクトマネージャーに求められるのはよりいっそうの調整力です。そこで第3回目では、プロジェクトをコントロールするための基礎として必要なコミュニケーションを中心に、現場で成果を上げるためのポイントを紹介します。
1プロダクトに2人のプロジェクトマネージャー
大きな枠組みで言うと、組込み系のプロジェクトマネージャーだからといって特に必要なスキルというものはなく、IT系のプロジェクトマネージャー向けにも使われるPMBOK(Project Management Body of Knowledge)の知識エリアで定義されているような、スケジュールマネジメント、コストマネジメント、スコープマネジメントなどのスキルが求められます。しかしそのような中でも組込み系の現場ではとりわけ「コミュニケージョンスキル」、つまり「対人的な調整力」を身に着けておく必要があると言えるでしょう。
組込み系のプロジェクトマネージャーの大きな特徴として、“2人のプロジェクトマネージャーが開発に携わる”ことがあげられます。ハードウェアを開発するプロジェクトマネージャーと、そのハードウェア(ターゲット)で作動するソフトウェアを開発するプロジェクトマネージャーです。また、これに加えてプロダクトを統括するプロダクトマネージャーが存在する場合もあります。それぞれが役割分担をして1つのプロダクトを作り上げていくのです。そのため、組込み系の開発が「すり合わせ開発」と呼ばれることもあるように、複雑とも言える関係の中での調整していく力が非常に重要になります。この“すり合わせ”をキーワードとして、組込み系ソフトウェアのプロジェクトマネージャーを考えてみて下さい。
組込み系ソフトウェアのプロジェクトマネージャーがすべき“すり合わせ”
組込み系の開発では、実際の開発の前にどういった市場やユーザーをターゲットにするのかというところから戦略を立て始めます。そしてそこからどのようなハードウェアが必要になって、そのために必要なソフトウェアは何か、と考えを組み立てていくのです。お客さんから「こんなものを作ってほしい」と依頼される、いわゆる受託型の開発スタイルではないので、目的地(コンセプト)を決めることがプロジェクト当初にやるべきことになります。
例えばアーキテクチャを考える場合に、ある機能をソフトウェアかハードウェアのどちらかで実現する必要があるとします。この場合、コスト、時間、人的資源などを鑑み、プロダクトマネージャーやハードウェアプロジェクトマネージャーと一緒になって考えます。立場によってソフトウェアの制御と、ハードウェアでの制御がのどちらにするのかといった判断は意見が割れることが多々あるでしょう。そこで、プロダクトマネージャーのリードのもと、3者が協力して的確な着地点を見つけることが必要となるわけです。
上記以外にも組込み系ソフトウェアのプロジェクトマネージャーがすべき開発前の準備は実に多岐に渡りますが、開発がスタートすればさらに他の調整をしなければなりません。ソフトウェアの開発は、ハードウェアとコンカレント(同時進行)であるため、とりわけハードウェアのプロジェクトマネージャーと密にコミュニケーションを取ることが大切になります。進捗状況やコストのことなど、相互に伝達と確認をしっかりとして、認識をすり合わせなければなりません。このためハードウェアに関する知識も必須と言えます。どんな部品を使うのかはもちろん、どういう動作をするのか、コストはどれくらいか、ハードウェアを開発するのにどういった工程で、それぞれどれくらい時間が必要かなど、ハードウェアの開発の進め方も知っておくべきです。そこがしっかり把握できていると、ハードウェアのプロジェクトマネージャーとコミュニケーションを取って、あらかじめ自分たちのリスクを予見することもできます。
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