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大ヒット映画「ALWAYS 続・三丁目の夕日」をASCII.jp的に斬る

【インタビュー】昭和33年の東京に突如出現したアイツの真相を山崎貴監督に直撃!!

2007年12月31日 16時00分更新

文● 千葉英寿

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CGゴジラはMacで制作

―― GMKゴジラをモデルにしたということですが、CGゴジラの制作過程についてお聞かせいただけますか?

“三丁目ゴジラ”は原型師・丹羽俊介さんの“GMKゴジラ”をベースに生み出された

山崎 原型になったのは、原型師の丹羽俊介さんがガレージキットとして制作して、ワンフェスに一日版権で出ていたもので、これにスタッフが手を加えたものです。最初はスマートなゴジラがいいな、と思っていたのですが、やはり量感のあるゴジラにした方がいいなと途中で思いまして。というのは、ゴジラって山が歩いてくるようなイメージがあるじゃないですか。それで量感のある丹羽さんのゴジラを僕の好きな顔に直したんです。GMKゴジラはいわゆるワニ顔だったのですが、それをイヌっぽい顔にしました。
 仕上がったものを写真で撮って、体表のディテールやテクスチャーなども原型からもらって、これをコンピュータに取り込んで、まず、Linux上の「Maya」でラフなポリゴンのモデルをスタッフが制作しました。1000ポリゴンぐらいのデータになったものをMacに取り込んで、3D CGペイントツールの「ZBrush」※2で自分でさらに加工を加えました。実はZBrushは以前から練習していて、いずれ試したいということもあって、自分でやりました。

※2ZBrush(ジーブラシ):米Pixologic社の3Dモデリングや3D CGのペイントを行なうソフト。映画「ロード・オブ・ザ・リング」を制作したWETA DIGITALなど世界中のクリエイターが使い始めている、最近注目のアプリケーションソフト。最新バージョンの「3.1」はWindows版のみリリースされている。山崎監督はメインはMac版で、3.1のWindows版はBoot Campで起動して、MacBook Proで使っているそうだ。


ZBrushで監督自らが作り込んだ

“三丁目ゴジラ”のCGはZBrushで監督自らが作り込んだ

―― CGツールの練習って。監督って練習するものなんですね(笑)。

山崎 それはまあ、もちろん。ただ、CGは数少ない趣味ですので。映画が仕事で、趣味がCGって悲しい感じもしますが、これは同時に幸せでもあります。やっててものすごく楽しいし。監督の仕事って、どれだけ人にまかせられるかだと思うのですが、少しは自分でやるところを残しておきたい、という気持ちもあるんです。今回はそれがZBrushでした。結果的に140万ポリゴンぐらいのデータに仕上がったものをCG班に渡して、ボーン(動きを制御する骨組み情報)を作ってもらいました。

三丁目ゴジラのCG

出来上がった“三丁目ゴジラ”CG

―― そのボーンは空想のものとしてのゴジラなんですか? それとも着ぐるみに入っている中の人のボーンなんでしょうか?

山崎 空想のゴジラのボーンです。ゴジラという生物がいたらこうだうな、という視点で作りました。人が着ぐるみに入っているゴジラって、着ぐるみそのものの素材をシミュレーションしたりすると、逆に難しいように思います。



ゴジラ 対 鈴木オート!?


―― ゴジラの制作以外の部分は、ほかのVFXシーンと同じだったのでしょうか?

プレビジュアル

ゴジラに蹂躙される町を疾走するオート三輪のプレビジュアル

山崎 そうですね。ただ、ぶっ壊すシーンというのはいままでほとんどやったことがなくて、一度、壊す実験をしてみたんです。爆発でボーンじゃなく、すごい圧力がかかって、ドーンと壊れる感じで。ひとつはさっきまでいた場所が壊れるというのもので、これはCGで作ることになったのですが、ボコンボコン家が壊れるのはもっと量感のある壊し方にしたいなと思いまして、それには爆発で壊れるのでは、どうも昭和の町にあわないな、と。結局、中にいろんな構造体を入れて、しっかり作った建物を後ろから青いバットで殴るという壊し方にしました。うまく壊れたのも壊れなかったものあったのですが、どちらも使いました。重みがあっていい感じに壊れてくれましたね。もっとも3軒しかないからできるわけで、これが大量だったり、毎週だったりしたら、とてもできませんね。

―― オート三輪がものすごく速く走っているように思うのですが(笑)。

山崎 あれは秘密兵器ですからね。凄い走りができるオート三輪、という設定なんです。元々、6軸のエアシリンダーを制御するというのもやりたかったということもありました。それでフライトシミュレーターのようなものを調達してきて、その上にドンガラのオート三輪を載せて、CGでやったシミュレーション通りに動かしてもらって撮影しました。オート三輪には実際に鈴木オート(店主)役の堤 慎一さんに乗っていただいて、それをクレーンカメラで撮っています。ゴジラが凄い、というところよりもその周りでやっていることの方が凄いんですよ。

―― もうひとつのCGのシーンというのは?

山崎 さっきまで建っていた鈴木オートと隣の床屋が崩れるシーンで、実物とまったく同じに見えるように鈴木オートをCGで再現するのが本当に大変でした。この部分はCGの中で最も重要でした。現実ではできませんし、ミニチュアでも切り替えるのにはマッチしないので。

―― ゴジラと言えば自衛隊が出てくるのが定番ですが、なぜオート三輪だったのですか?

山崎 最初からあのシーンは、ゴジラと家族を守る堤さん(鈴木オート)のタイマンという構想で作りましたので。一作目の堤さんの動きが、ゴジラっぽかったということもあって、ゴジラと戦えるのは鈴木オート以外にいないと。堤さんに出ていただいて、敵の怪獣を出さなくても、ちゃんとエンタテイメントになるんだなと実感しましたね。

―― なるほど! 「ゴジラ 対 鈴木オート」なんですね(笑)。最後にゴジラの話ばかりではなく、本編で監督が好きなシーンをお聞かせいただけますか?

山崎 トモエさん(薬師丸ひろ子)と美加ちゃん(小池彩夢)の別れのシーンですね。この時は、脚本に書いてある以上のものが出てきて感動しましたね、なんだこりゃ、と。ほとんどエピローグに近いところだったので、サラッと行くつもりだったのですが、とても気持ちが持って行かれまして、うわーっと思いましたね。当然、役者さんの力もあるのですが、その場の雰囲気とかで、時々そういうことが起こるんです。ただ、マイナスのことが起こる時もあるんですけどね(笑)。

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