ネットの反応はどうか?
これに対して中国メディアやネチズンの反応はどうだったか? 中国メディアに関しては、淡々と裁判について紹介する記事と、北京谷歌科技有限公司を非難する記事が8:2程度の割合で存在した。
それらの記事に対するネチズンの反応(中国ではネットの記事に対してコメントを付けられるのが一般的)も多くは「中国のこのような悪しきビジネススタイルは法律で禁止すべき」と辛口だが「ライターよ、貴様はグーグルの手先かそれともスパイか」というコメントも見られた。
企業や商品に「類似の名前」は、よくある話
今回提訴したのは、北京のグーグルとは何の関係もない企業が「谷歌」を名乗り、本家を訴えるという事件であった。筆者もこの事件をきっかけに「谷歌」のつく企業を探してみた。すると、多数の企業がグーグルが谷歌を名乗った2006年4月に「谷歌」の名で登記し、自身を「谷歌」を名乗っていたことが判明した。
こういったことを考えると、世界的に有名な会社と名前がそっくりの会社は中国では「あって当たり前」だと考えたほうがいいだろう。そのような中国の商習慣の下では、いつぞやの「NECの会社丸ごと偽造事件」というのも規模は大きいかもしれないが、中国では特別おかしい話ではないような気がしてならない。
クレヨンしんちゃん裁判もなるべくしてなった
社名ではないが「クレヨンしんちゃん裁判」もなるべくしてなったということか。
クレヨンしんちゃん裁判を簡単に紹介しておこう。クレヨンしんちゃんが中国に進出する前に、クレヨンしんちゃんに当たる中国語「蝋筆小新」が商標として登録されていた。クレヨンしんちゃんの権利元の双葉社は、その商標を登録した中国企業に対して商標の取り消しを求めて裁判を起こしたが、司法は原告の訴えを棄却。日本のクレヨンしんちゃんが、親しまれた中国表記ではなく「Shinchan」という商標名で販売せざるを得なかった事件だ。
この事件について中国国家知識産権局のウェブサイトはこう書いている。
「蝋筆小新という商標を使って当時双葉社に提訴された広州誠益眼鏡有限公司は、1996年1月の時点で蝋筆小新と名がついた9件についての商標を登録している。双葉社が訴えたのは2005年1月であり、9年の間にわたって注意しなかったのは双葉社の怠慢としかいえない。中国人の間で蝋筆小新は誠益社の商標という印象があり、双葉社の蝋筆小新は有名ではないので、誠益社の蝋筆小新の商標は合法である
ちなみに同記事ではこうも書いている。
「誠益社は『蝋筆小新』以外にも『7up』や『スヌーピー』などの50近い商標を登録したが、どの企業も訴えてこなかった」