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ASCII.jpヘッドホン研究所 第1回

優れた遮音性が魅力 SHURE「SE110」

2007年12月27日 00時00分更新

文● 高橋 敦

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 家庭向けの5.1chサラウンドシステムがごく一般的な商品となり、超高級のハイエンドオーディオシステムが持てはやされる昨今。しかし、「いい音を楽しみたいけど、大きな音は家族や近所の迷惑になる。置く場所もないし……」と気兼ねして、なかなか導入には踏み切れないという人も多いだろう。


 そこで注目したいのが、最近人気の“ちょっと高級”なヘッドホンだ。当連載『ASCII.jpヘッドホン研究所』では、こうした1~3万円クラスのセミ高級ヘッドホン・イヤホンの新製品を取り上げ、その使用感や音質についてレポートしていきたい。

SHURE「SE110」

SHURE「SE110」(写真はホワイト)

 米SHURE社のイヤホン(インナーイヤー型ヘッドホン)「SHURE Eシリーズ」は、本来は高価な業務用ステージモニター機だったが、高度な遮音性と明瞭な再生音質がiPodユーザーの一部に注目されてコンシューマー市場でも話題となり、カナル型ヘッドホン普及の先駆けとなった。

 そのEシリーズのヒットを受けて、当初からコンシューマー向けとして企画・開発されたのが「SEシリーズ」だ。そのエントリーモデルとして追加されたのが、今回評価した「SE110」(販売はヒビノ(株))である。バランスドアーマチュア方式ドライバー搭載機としては実売価格が1万円強と、画期的な低価格を実現している。SHUREファンならずとも気になる製品だろう。


Point 1 最高レベルの遮音性

本体形状は丸く、耳に触れる部分はエラストマー樹脂が使われており、耳への収まりもいい

本体形状は丸く、耳に触れる部分はエラストマー樹脂が使われており、耳への収まりもいい

 イヤーパッドは砲弾型の形状を採用した「ソフト・フォーム・パッド」(ソフトフォーム)と、国内メーカーのカナル型ヘッドホンでも一般的な素材・形状の「ソフト・フレックス・パッド」(ソフトフレックス)の2種類が付属する(各3サイズ、計6個)。

 ソフトフレックスは耳に押し込むだけなので、使いやすいし付け心地もいいが、おすすめはソフトフォームだ。文具店などで販売されている耳栓と同系統と思われる素材が用いられており、形状もそれに近い。

 となれば遮音性も耳栓並み。今回は室内でテストを行なったが、外付けHDDやエアコン、サーキュレーターなどの稼働音は、ほぼ聴こえなくなった。カナル型イヤホンの中でもトップクラスの遮音性と言える。

黒くて下が平らな方がソフト・フォーム・パッド

黒くて下が平らな方がソフト・フォーム・パッド。全体を指先で軽く押し潰してから耳に入れると、耳の中で広がってフィットする

ケーブルを耳の上側に通すのが正しい付け方

ケーブルを耳の上側に通すのが正しい付け方。同社イヤホンに共通する装着時のポイントで、「シュアーがけ」などとも呼ばれている


Point 2 太いケーブルは取り回しにやや難

 少し残念なのはケーブルだ。太く硬く、取り回しがあまりよくない。音質重視で採用したのだろうが、他メーカーではもっと細くてしなやかなケーブルを採用しているので、見劣りすることは否めない。

 左右のハウジングをつなぐY字ケーブルの先が延長ケーブル仕様のコネクターになっているので、そこから先を適当な長さの他社製ケーブルに変更すれば、ケーブルの取り回しは改善できるだろう。

付属の延長ケーブル(写真左)

付属の延長ケーブル(写真左)。延長ケーブルは利用スタイルに合わせて適当な別売製品を入手、交換するといい


Audio Check!

 カナル型イヤホンはイヤーパッドの選択で音質に大きく差が出る。筆者の場合、大きめのソフトフォームをギュッと押し込むことで中低域の厚みが最適化されたので、今回はその組み合わせで試聴した。再生環境は第3世代iPod nanoもしくはAirMac Express+DAC/ヘッドフォンアンプ(izo iHA-1A)。Appleロスレス形式で無劣化圧縮したファイルを再生ソースとした。

「To The Limit」(FAKiE)
 ナイロン弦ギターでのアルペジオの高音弦やハーモニクス奏法の輝き、リズムの鋭さなどはもう少しほしい。しかし、ひとつひとつの音の粒立ちは心地よく、フレーズは生き生きと弾ける。

「Lush Life」(Jacintha)

 女性ボーカルの肉感はよく引き出されており、声の抜き際に残る気配まで描写する。音場全体に湿っぽい密度感が漂うのも、音源の雰囲気を引き出せている点だ。ウッドベースはかなり低い音域まで出ているが、量感は控えめ。

 ほかにハードロックなども聴いてみたが、いずれもボーカルやギターなど中音域のパートの描写の良さが印象的だった。

 聴き初めのインパクトは正直に言えば弱かったが、聴き込んでみると、ファーストインパクトの弱さはそのナチュラルなチューニングからであることが分かってきた。音域を無理に広げず、特定の音域にアクセントを付けるようなこともしていない。バランスドアーマチュア方式の長所である反応の良さを素直に引き出し、中音域の描写力を中心に音をまとめたという印象である。


総合評価

 もう少しメリハリを利かせた音を好む方も多いだろうが、「屋外利用時の音質=音質+遮音性の総合力」と考えれば、一般論としてもSE110の能力は高く評価できるはずだ。何しろ遮音性の高さは圧倒的。騒音に邪魔されずに音楽を聴きたいが、ノイズキャンセルシステム搭載ヘッドホンほどの物々しさは遠慮したいという方にもいいだろう。

SHURE SE110 製品情報
製品名 SE110
ドライバー バランスドアーマチュア型
感度 113dB SPL/mW
再生周波数帯域 22Hz~17.5kHz
公称インピーダンス 27Ω
入力コネクター 3.5mmステレオミニプラグ(金メッキ)
ケーブル長 約45cm
質量 約14g(ケーブル、コネクタ含む)
付属品 ソフト・フォーム・イヤパッド(S、M、L)、ソフト・フレックス・イヤパッド(S、M、L)、クリーニングツール、91cm 延長ケーブル、キャリングポーチ
価格 オープンプライス(実売価格1万円強)

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