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時事ニュースを読み解く “津田大介に聞け!!” 第13回

国会空転で先延ばしもアリ!? 目前に迫る「ダウンロード違法化」

2007年12月28日 18時00分更新

文● 編集部、語り●津田大介(ITジャーナリスト)

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コンテンツホルダーとJEITAが対立


── 文化庁が今回の資料を出す前に、どういった議論の対立があったんですか?

津田 簡単に説明すると、「補償金の適用範囲を拡大したい」という立場の権利者団体と、「DRMがあれば補償金は必要ない」という立場のJEITA(社団法人電子情報技術産業協会:電子機器メーカーで作る業界団体)との間で意見が分かれていました。

 これまでずっと「補償金がいる」「いらない」という対立があったため、その落としどころとして、文化庁が「DRMをきちんと整備し、権利者とユーザー間でコピー回数について契約できるような体制が普及したら、補償金は廃止しよう」といったビジョンを示したわけです。

 前提として、もともと知財戦略本部から文化庁に対して「私的録音録画補償金制度を抜本的に見直せ」という要請が出ていたこともあります。私的録音録画小委員会は2008年1月までに結論を出さなければいけませんが、最終的に何も決まらずに現状を維持しても仕方ないので、文化庁は何らかの方向性を示す必要があったのです。

 それで出してきたのが「今回の資料」なんです。


【解説】補償金の撤廃


 「補償金の撤廃」に関しては、私的録音録画補償金について定めた法律(著作権法30条2項)を、「時代に合わせて見直すかどうか」で議論が進められてきた。


 現在、音楽/映像のコンテンツを複製できるCD-R/DVD-R メディアなどは、補償金を上乗せした状態で販売されている。この補償金はメーカーや業界団体を通じて、著作権者に分配される。


 しかし、「パソコンやiPodで音楽や映像を見る」という新しいコンテンツの視聴方法が普及してきたため、この補償金制度の適用範囲が合わなくなり、権利者団体から新しい機器への適用拡大(いわゆる「iPod税」の実施など)が呼びかけられていた。


 2006年、文化審議会・著作権分科会に専門の会議である「私的録音録画小委員会」が発足。当初は2007年度中に結論を出す予定だったが、意見が分かれて議論がこう着状態にあった。


 しかし、18日に開かれた私的録音録画小委員会の会合にて、この状況に変化が訪れる。文化庁から「デジタル著作権管理 (DRM)で著作物の複製をコントロールすることで、将来的に補償金を撤廃する」という資料が提出された。



法律ではなく、DRMで問題を解決


── 文化庁の資料は、小委員会の参加者から同意を得られたんでしょうか?

津田 委員会では、ほとんどの委員が「まとめではこちらにいくしかない」という方向で認めたので、ひとつの落としどころになったと思います。

 ただ個人的には、この案は要するに、録音録画の複製問題については、著作権法30条の適用範囲からすべて外しましょうということを言っていると感じました。今までは、私的複製について定めた著作権法30条があったおかげで、ユーザーはCD-R/DVD-Rなどを使って自分のために複製する権利が認められていた。

 しかし、今回、文化庁が言っているのは、今後音楽と動画については今までの30条ではなく、「DRMと契約ベース」で問題を解決しなさいということだと思います。

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