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シャープと東芝、液晶パネルおよび半導体に関する提携を発表

2007年12月21日 21時26分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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 シャープ(株)と(株)東芝は21日、東京・赤坂のホテルニューオータニにプレス関係者を集め、両社が液晶パネルおよび液晶テレビ用半導体の提供に関する提携を結んだと発表した。2010年度にシャープは東芝から液晶テレビ用システムLSIを約50%、東芝はシャープから32型以上のテレビ用液晶モジュールを約40%購入することを目標に、2008年度から相互供給の拡大を進めるという(数字はそれぞれの調達比率)。

固い握手を見せたシャープの片山社長と東芝の西田社長

会見の後のフォトセッションで、固い握手を見せたシャープの片山社長(左)と東芝の西田社長(右)

 会見には両社社長が出席し、両社の提携を象徴するように固い握手を交わして見せた。両社は今年の夏頃から提携の可能性を模索していたという。



シャープから液晶パネルの購入を増やす
東芝側の事情とは?


東芝の西田社長

東芝の西田社長

 東芝は従来より、シャープから供給を受けるほかにも、(株)日立製作所や(株)日立ディスプレイズ、松下電器産業(株)との合弁で設立した(株)IPSアルファテクノロジなど、数社から液晶パネルの供給を受けていた(具体的な割合や数字は非公開)。また、大型テレビに関しては有機ELパネルの採用を視野に自社で技術開発を行なってきたが、今回の発表によって、有機ELパネルについては「見送る」(代表執行役社長の西田厚聰氏)として、今後は積極的に液晶テレビを展開していくことを表明した。西田氏はあくまでも現時点での自社技術にフォーカスした話だが、と前置きした上で「シャープの液晶パネルには、長寿命や消費電力において、ほとんどの大型有機ELパネルは太刀打ちできないと判断した」という。

 IPSアルファテクノロジについては「出資分を売却する方向で検討しているが、現時点では何も決まっていない」(同氏)としており、今後は積極的にシャープからの液晶パネル供給を受ける方向で両社の協議を進めていくようだ。

 シャープとの提携に踏み切った理由について、西田氏は「(シャープが大阪の)境工場に完成させようとしている“第10世代液晶パネルへの期待」が大きいとし、「画質の高さだけでなく、環境性能の高さ。とりわけ低消費電力や長寿命、薄型軽量化による使用資源の少なさが、東芝の考える商品像に合致した」と、シャープの液晶パネルや製造技術を手放しで称えた。

 さらに、「東芝が持つLSI技術によって、シャープの液晶をいっそう高性能、高機能化できる。鬼に金棒にしたい」と、両社提携によるWin-Winの関係が構築できることに大きな期待感を示した。

 なお、会見後の記者からの質問で、キヤノン(株)との協業で進めている「SED」(表面伝導型電子放出素子ディスプレー)について聞かれると、「現在は、訴訟に関する件を含めてキヤノンさんにすべてお任せしている状況。私からは一切コメントできない。今回の提携について、(SEDの現状は)まったく関係ない」と、きっぱり関連を否定した。



東芝からシステムLSIを購入するシャープ側の意向とは?


シャープの片山社長

シャープの片山社長

 シャープは2007年度の通期予測で液晶事業だけでも1兆円規模の売り上げに成長させた。同社は以前から自社ブランド「AQUOS」(アクオス)に搭載するだけでなく、「今年度で大型液晶(パネル)の20%が外販」「(東芝との間の)取引額は700~800億円」(代表取締役社長の片山幹雄氏)というように外販も積極的に進めていた。これを将来は3倍以上に増やしていきたい、というのが狙いだ。

 シャープは従来から自社でもLSIの開発を進めているが、一部は東芝からLSI供給を受けていた。また自社開発のLSIも製造については台湾のファウンダリー(生産工場)を使っていた。今後は自社でのLSI開発を「携帯電話用のイメージャー(撮像素子)と、液晶駆動用ドライバーの2つに集中していきたい」「(東芝製のシステムLSIを購入するだけでなく)自社がIP(知的所有権)を持つ半導体生産についても東芝さんに供給いただくつもりでいる」(同氏)と述べ、その分の社内リソースを好調な液晶パネル生産事業に今後も積極的に割り振っていく方針をうかがわせた。

 ただ、両社が同じ液晶パネルとシステムLSIを採用することは、製品やブランドイメージが似通ってしまうのでは、という危惧もある。その点を質問されると、「レグザもAQUOSも、それぞれに異なるブランドとして認識されている。絵作りの考え方も違う。最終的な商品作りには個性が出せるだろう」(片山氏)と答え、それぞれのブランドに強い自信を見せた。

 また、シャープはBD(Blu-rayディスク)陣営で、東芝はHD DVDを開発・推進しており、次世代DVDにおいては異なる立場だが、「次世代DVDの話は一切関係ありません」ときっぱり否定した。


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