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栗原潔の“エンタープライズ・コンピューティング新世紀” 第17回

エンタープライズサーチの真の価値を探る(7)――バーチカルサーチの可能性

2007年12月20日 16時26分更新

文● 栗原潔

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 現在、注目を集めているインターネットおよび企業内のサーチテクノロジーの多くは、コンテンツのカテゴリーに依存しない「ホリゾンタル(水平型)のサーチ」である。

 ホリゾンタルなサーチエンジンはコンテンツの具体的意味内容には関知せず、構造的な分析のみを行なった検索処理をする。利用者がコンテンツのカテゴリーを気にせず、同じユーザーインターフェースで、さまざまな情報を検索できる点こそが、サーチが提供する価値なのだから、これは当然だ。

 しかし、逆に、サーチの対象となるコンテンツのカテゴリーを絞ることで、よりユーザーの意向に沿ったサーチを提供できる可能性もある。このように特定のカテゴリーのコンテンツや特定の用途に特化したサーチを、一般に「バーチカル(垂直型)のサーチ」と呼ぶ。

 バーチカルサーチの今日における最も一般的な例はテクノラティ(Technorati)などが提供する「ブログサーチ」だろう。ほかにも「動画サーチ」「音楽ファイルのサーチ」などが一般的に使われている。これらのサーチでは、単にサーチの対象となるサイトを限定するというだけではなく、さまざまな実装上、および、ユーザーインターフェース上の工夫がこらされている。



人を検索するSpock


 より革新的で興味深いバーチカル・サーチの事例のひとつピープルサーチ、つまり、人物の検索に特化したサーチエンジンである「Spock」がある。このサーチエンジンは単にネット上にある人物関連の情報を抽出するだけはなく、人というエンティティー(データのまとまり)を理解した検索結果を提供してくれる。

Spock

Spock(http://www.spock.com/)

 例えば、米グーグル社のCEOであるEric Schmidt(エリック・シュミット)氏と同姓同名の人物の情報を「Google」で検索するのは困難だ。結果の最初の数ページはすべてグーグルのCEOの情報で占められてしまうからだ。

 Spockで同じ検索を行なうと、グーグルのCEO以外の「Eric Schmidt氏」(例えば、テキサス州立大学の教授やFOXスポーツ・ネット社のマネージャーなど)の情報も個人別にまとめて表示され、容易に検索することができる。

 つまり、検索エンジンのGoogleでは「Eric Schmidt」という文字列を含む文書を単に重要度順に並べているだけだが、Spockでは、グーグル社CEOのEric Schmidtとテキサス大学教授のEric Schmidtは違う人物だということをサーチエンジンが理解して、検索と結果の表示を行なってくれるということだ。

 このように、バーチカルサーチとは、単にホリゾンタルサーチのサーチ対象を絞ればよいというものではない。テクノロジー面でもいくつかのイノベーションが必要となる。エンティティーに関するさまざまな知識を人間がサーチエンジンに組み込む必要があるのだ。さらに、実装やユーザーエクスペリエンスの設計に関する工夫、そして、人手によるさまざまなチューニング作業が必要となるだろう。

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