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「ボトルネックを潰せ」

池田信夫が語る、「ムーアの法則」と日本の経済(後編)

2007年12月24日 13時00分更新

文● 松本佳代子、語り●池田信夫

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ボトルネックその2 「電波」


 まだ5年ぐらいは通信のボトルネックが残ると思います。なぜかというと、電波政策が間違っているからです。

 テレビ局は、UHF帯で300MHzもの広い帯域(470MHzから770MHzまで)をたった7チャンネルで占有しています。実際に飛んでいる電波を計測すると、東京で放送用に使われているのは70~80MHzぐらいです。残りの200MHz強は空いたままなんですよ。

 これに対して、携帯電話は250MHzほどの帯域を1億チャンネルぐらいで使っている。こう考えると、テレビの電波はものすごく無駄な使われ方をしています。

 アメリカでもこれが問題になり、テレビ局の使っていない帯域を検知して使える通信機を認めろという話が出ています。先日は700MHz帯のオークションが行なわれましたが、グーグルがこれに応札しました。グーグルは電波が最後のボトルネックであることを見抜いて、FCCに「どんな端末でも使えるように電波をオープンにしろ」と要求し、FCCもこれを認めました。



ボトルネックその3 「著作権」


 法律によって守られた人為的なボトルネックとしてはもうひとつ著作権の問題があります。文化庁が「葵の御紋」みたいに持ち出してくるのが「ベルヌ条約」です(正式名称は「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」)。ベルヌ条約は1886年に結ばれて、世界中のほとんどの国が加盟してます。

 著作権は200年以上ある歴史の中で、強化されたことはあっても、緩和されたことはありません。米国では初期の権利期間だった50年を75年に延長して、さらに95年にしています。

 これに関しては権利者が勘違いをしていると思います。保護期間を長くしても、使いたい人が使えなくなるだけで、権利者の収入につながるとは限りません。

 例えば、グーグルがブックサーチをやるときに分かったのは、スタンフォード大学の図書館の蔵書の75%はオーファンワークス──「みなし児」だということです。つまり、著作権者が誰か分からず許諾を取れない状況になっている。残りの25%のうちの10%が(著作権の切れた)パブリックドメイン。権利が生きているものは、たった15%です。著作権はそういうムダを導き出します。

 スタンフォード大学には歴史的な学術書が多い。これらは世界中で共有すべきものなのに、著作権の壁でデジタル化できません。権利者が死んでいたり、会社が倒産したりしていて誰の利益にもなっていないにも関わらずです。これは技術が進歩してもどうしようもない問題です。世界的な知的損失ですよ。

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