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【レビュー】世界初有機ELテレビ「XEL-1」は、ひとりじめ感が最大の特徴

2007年12月31日 11時00分更新

文● 編集部 小林 久

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ヘッドホンで没入したい


 XEL-1の画質モードには標準的な「スタンダード」、店頭デモ向きの「ダイナミック」、細かな調整が可能な「カスタム」の3種類のモード(と静止画用の「フォト」)が用意されている。私はカスタムで「ピクチャー」(コントラスト)と「明るさ」の数値を少し下げ、色温度も暖色に近い「低1」にして使用している。

XEL-1

画質調整画面。割合細かく調整できる

 XEL-1ではHDMIやDLNAなど入力ソースごとに設定値を記憶させることができる。設定次第で、ド派手な印象にも、モニターライクな緻密な感じにもできる「懐の深さ」がこのテレビの特徴である。

 外部機器からの入力インターフェースをHDMIのみに絞り込んだ潔さには好感が持てた。アナログソースは今後減っていくだろうし、使わない端子がバックパネルにぎっしりと並んでいることには抵抗があるからだ。ただ、外部機器との接続を考慮して、デジタル出力(特に音声)は搭載してほしかった。内蔵のスピーカーの音は低域の量感が足りず腰高な印象なので、できればAVアンプなどを介してそこそこのスピーカーを接続したいからだ。

 音に関してはヘッドホン端子からの出力をより高品質にしてほしいという要望もある。現状では残留ノイズが多く、それほど良いとは言えない。感動には音も重要な要素だ。この画にいいヘッドホンを組み合わせるだけで、かなり没頭感のある視聴環境ができると思うので、ぜひとも改善をお願いしたい。

XEL-1

背面端子には、HDMI入力が1系統。これに加えUSBとEthernetの端子が用意されている

 また、DLNAサーバーやUSBストレージに格納した動画や静止画を見られるというのは便利なのだが、対応形式がMPEG-1、MP3、JPEGなどごく一部である点は少々肩透かしだった。パソコンとの接続を考えるなら、WMVやWMA、DivX、H.264……など、もっともっと対応してほしい形式がある。本機のように自由に移動できるテレビで、ネットワークにさえつなげれば部屋のどこでも動画が見られるというのは大きな可能性があるだけに、対応形式の充実を期待したいところだ。



小ささこそ正義である


 次世代テレビの有力な候補に挙げられながら、実用化には本当に長い時間がかかった有機ELテレビ。XEL-1はその期待を裏切らないすばらしい製品に仕上がっていると思う。購入してひと月といったところだが、画質調整好きの筆者には、カスタムモードでいろいろいじくれるのが楽しくてしょうがない。今回の製品は既存のブラビアのエンジンを流用したものだが、今後は有機ELのポテンシャルを最大限に生かした新エンジンも登場してくるだろう。

 XEL-1の魅力はなんだろうか? 私は「ひとりじめ感」だと思う。あの「小ささこそ正義」なのだ。なんというか凝縮されている。小さな窓かも知れないが、そこには小宇宙が広がっている。

 今後は「DAV-IS10」(ソニー)のようにコンパクトなサイズで、Blu-ray Discの再生可能なシアターシステムなども登場してほしいと願っているし、そうなれば机上で完結した箱庭的ホームシアターが実現しそうである。

 「パネルの小ささに対して、価格が高すぎる」という人もいるが、私としては、3mmという薄さのメリットを生かしつつ、11インチというサイズの制約を逆手にとって「パーソナルテレビ」のコンセプトをじっくりと煮詰めた点こそすばらしいと思う。

 すでに各種展示会で20インチ台の試作機も公開されており、大画面化もそれほど遠い将来ではない。ただし、片手で持てるコンパクトなテレビの開発もぜひ継続してほしいと個人的に考えている。


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