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松岡美樹の“深読みインターネット” 第4回

グーグル版Wikipedia「knol」が問う、匿名か実名か論議

2007年12月17日 22時20分更新

文● 松岡美樹 タイトルイラスト●さとうゆり

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広告収入がほしいサービス事業者はCGMの暴言がこわい


 ただし冒頭で引用したエントリーで、池田氏が指摘する以下の点は見逃せないポイントである。

先日の情報ネットワーク法学会でも指摘されたように、記事の質を保証できないブログには、コンプライアンスにうるさい大企業は広告を出稿しないため、利益が出ない。「バカ」とか「死ね」といった言葉の横に、それに関連する企業として広告が表示されることは、むしろ企業イメージにはマイナスだ。


●池田信夫 blog 『匿名ウェブの終焉』

 今後、CGMのサービス提供事業者が広告収入を重視すればするほど、ユーザーが書く文章の質や品位を気にかけるようになるはずだ。で、運営側が何らかの形で、コンテンツの内容に介入する可能性は高くなる。

 それがフィルタリングの類なのか、人力チェックなのか。あるいはそれ以外の何らかのシステムなのかは別にして。



実名化でユーザー離れが進む危険性はないのか?


 ただしこの場合も

  1. 事業者が広告がらみでコンテンツの内容を気にすること、と
  2. 文章の質や品位を上げる絶対的な解が実名制なのかどうか?

とは、まったく別の問題である。

 (1)はすでに起きていることだが、(2)はこれからの課題だ。実名制には一定の効果もあるが、デメリットだって大きい。なぜなら情報発信するための敷居が一気に高くなってしまうからだ。

 例えば「実名が出るならもうやめた」と、多くのネットユーザーがCGMを捨ててしまえばどうだろう? ブログやSNSのおかげでユーザー参加型の世界がせっかく開けたのに、コンテンツを作るユーザー自身がいなくなれば元も子もなくなってしまう。

 さて実名論者が唱える実名制は、書く対象やメディアを限定した上でのシステムなのか? それとも「何でも実名」なのか? 不可欠な前提のない実名論はリアリティーがないし、それなしでは今後も議論が深まらないだろう。


松岡美樹(まつおかみき)


新聞、出版社を経てフリーランスのライター。ブロードバンド・ニュースサイトの「RBB TODAY」や、アスキーなどに連載・寄稿している。著書に『ニッポンの挑戦 インターネットの夜明け』(RBB PRESS/オーム社)などがある。自身のブログ「すちゃらかな日常 松岡美樹」も運営している。

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