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「隠す権利」から「広める制度」へ 変化が求められる著作権のあり方

2007年12月12日 17時00分更新

文● 編集部

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課徴金を利用した新しいモデルを


 これに対して白田氏が「社会的コストが小さな一つの代替案」として示すのが課徴金制度を用いて著作者に利益を分配するシステムだ。

 白田氏は、ハーバード大学のウィリアム・フィッシャー教授の説に言及しながら、「ある国の経済規模全体に占めるコンテンツ産業の規模は、おおよそ決まっており推計可能だ。その推計をもとに、税あるいは課徴金として国民が毎年一定額を支出することにより、国民がコンテンツ産業全体を買い上げることができる」と説明する。

 課徴金制度では、ユーザーが納める額は一定で、徴収の段階で誰が何をどのように閲覧したかは問題にならない。これによりユーザーのプライバシーを維持し、「お金を払っていない人にはコンテンツにアクセスさせない」という、本質的には困難であり、取引費用の大きな所有権的アプローチをとる現在の著作権制度とは別のあり方が出てくる、と白田氏は話す。

「自分の納めた課徴金のうち、『○○パーセントを××というクリエイターに分配する』と指定できる仕組みが確立できれば、クリエイターの側には収入を増やすために、自分の作品を積極的に広める動機が出てくる。本質的にクリエイターは、作品がユーザーの手許に届くことを望んでいるはず。また、情報技術関連のエンジニアは、情報の送り手と受け手の自由をひろめるよう努力してきたはず。こうした積極的な方向への理想や努力を制約する制度は不幸だ」(白田氏)

 DRMでは新しいメディアや技術が現れるたびに、それに対応したDRMを開発する費用が必要になる。また、DRM技術が破られた場合には、ハードウェアやソフトウェアを一斉に改修する費用が必要になる。それらの費用は膨大なものになるだろう。しかし、課徴金制度であればそういった問題は起こりえない。

「コピーワンス、ダビング10の例を見ても分かるように、DRMによる著作権の完全管理には、非常に大きな社会的コストが必要だ。著作物を所有物としてとらえる考え方には無駄が多いと思う」(白田氏)

 課徴金制度の最大の問題点は、既存の著作権制度とはまったく異なる仕組みである点だという。それ以外にも、さまざまな問題が出てくることが考えられるが、自由にユーザーに観てもらって、好きな作品だと分かってもらうとクリエイターの収入が増える。隠す方向ではなく見せる方向に皆が努力するという、積極的な社会状況が魅力だという。

 インターネット上で、コンテンツをどのように流通させ、ビジネスとして確立していくかに関しては、さまざまな議論があっていいはずだ。いずれにしても、時代に即した「著作権のあり方」を考え直す、節目が訪れているのは確かであり、見る側も提供する側も安心してコンテンツに接することができる、そんな仕組みづくりが必要だ。

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