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時事ニュースを読み解く “津田大介に聞け!!” 第11回

iTunes Storeの撤退もあるか?

進まないレーベル会社の参加 PC向け音楽配信のキビしい現実

2007年12月10日 10時00分更新

文● 編集部、語り●津田大介(ITジャーナリスト)

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ソニーとエイベックスの楽曲が扱えない


── なぜサービスの終了に追い込まれたのでしょうか?

津田 大きな原因のひとつは楽曲カタログが偏っていたという点にあります。結局、楽曲を数多く提供してくれるレコード会社が東芝EMIとワーナーミュージックジャパンしかなかった。

 EMIとワーナーは、2001年から「du-ub.com」(ドゥーブドットコム)という音楽配信サービスを開始し、2003年にこのサービスを撤退してレーベルゲートに合流しました。そしてこの2社は2004年ごろから、プロバイダー(ISP)が始めた音楽配信サービスに対して、積極的に楽曲を提供し始めました。だから、この時期に一気に音楽配信サービスが増えたんです。

 しかし国内の売れ筋楽曲を握っている、ソニー・ミュージックやエイベックスは、こうしたISPの音楽配信サービスに楽曲を出さなかった。結果、カタログが偏ってしまって、売り上げが厳しい状態が続いていたんです。


── SMEやエイベックスは、なぜISPに楽曲を提供しなかったのでしょうか?

津田 自社の音楽配信サービスを伸ばしたいからでしょう。

 SMEの場合は、レーベルゲートはもともと、「So-net」を手掛ける、ソネットエンタテインメント(旧ソニーコミュニケーション ネットワーク)が母体となって作られた会社です。moraはあくまでレーベルゲートのサービスブランド名ですから。

 エイベックスも、自社サイトで音楽配信サービスを提供しています。例えば「ミュウモ」という、着うたの配信をやっているサイトもあります。独自にいろいろ音楽配信を手掛ける文化があったため、ほかのISPに出すことはあまりなかった。iTunes Storeには楽曲を提供してますが、それは条件がそろったからであって、こうした例はあまり多くありません。



トラフィックを集めるための音楽配信


── そもそもISPはなぜ音楽配信を始めたのでしょうか?

津田 ポータルサイトを展開しているISPは、広告を集めるために、とにかく注目を集めるサービスを展開して、トラフィックを呼び込む必要があります。音楽コンテンツは人気が高く、ISPとしては従来のポータル用サーバーを使い回せる部分もあったので、「客寄せ」としてやる意味があったんです。

 ただ、結局長く運営してもSMEやエイベックスは楽曲を提供してくれない。パソコン向け音楽配信が伸び悩む一方で、携帯電話向けの「着うたフル」が伸びていったので、レコード会社のほうもパソコン向け配信に力を入れなくなってきたという背景もあるでしょう。

 ISPも最初は赤字覚悟で運営していたわけでしょうが、あまりにも赤字が多く、集客効果も見込めないということで、サービスを停止したというのが真相でしょう。見切りを付けるタイミングが遅かったのかもしれません。


(次ページに続く)

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