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SaaS・ASP時代の企業ネットワークの条件――通信事業者に聞く、SaaS・ASPが前提の情報基盤

SaaS・ASP環境の「安全性」を求める声に応えるために、VPNの拡張で対応

2007年12月17日 00時00分更新

文● 文●アスキービジネス編集部

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閉域ネットワークのVPNで全社規模のネットワークセキュリティを高め、かつSaaS・ASPが利用できれば、業務データの安全性は格段に向上する。SaaS・ASPのメリットを業務で最大限に生かすためのセキュアなネットワークはどこまで実現できるのだろうか。

 高いセキュリティレベルのVPN上でSaaS・ASPを利用するための仕組みは既に国内で稼働している。「統合VPN」アプリケーション接続サービスを提案する大手通信事業者のNTTコミュニケーションズ株式会社にそのお話を伺った。

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NTTコミュニケーションズ株式会社 ブロードバンドIP事業部 マーケティング部担当部長 中山幹公氏

 2000年頃にIT業界ではソフトウェアの新しい配布形態、利用形態であるASPが注目を集めました。しかしながら広く普及したとはいえない結果に終わり、いわゆる一過性のブームにすぎなかったかのような認識を多くの人が持ったかもしれません。 ところが現在、SaaSという似た考え方のアプリケーションが登場し、ASPも再注目を集めています。なぜ過去にASPは一過性のブームのような現象で終わってしまったか。それには2つの理由が考えられると思います。

 まず、当時のASPは現在のSaaSのように、ユーザーの要望に応じて自由自在にカスタマイズしにくかったためでしょう。セールスフォース・ドットコムなどSaaSの成功例を見ると、ASPからSaaSにただ名前が変わっただけではない質的な変化を感じることができます。

 そしてそれ以上に、ASPを利用するための大前提となるブロードバンドな通信環境がビジネスの現場に十分浸透していなかった事情が大きいのではないでしょうか。

 当時に比べてブロードバンド化はかなり進みましたから、情報基盤の問題はかなりクリアされています。私たちは通信事業者ですから、今後ソフトウェアがネットワークを通じてサービスとして提供される、そのような状況の変化に対し、積極的な対応を図っていくつもりです。

 1つ目は、ユーザーがセキュリティや接続性に縛られずVPN環境からSaaS・ASPを利用できるようにすることです。VPNでセキュアな自社ネットワークを既に構築している例はたくさんあります。ですから、閉域ネットワークのVPN上でSaaS・ASPを利用したいというのは、企業にとって当然のニーズといえます。現在稼働しているVPNでそのままSaaS・ASPを利用できたほうがセキュアかつ自然ですし、実際に、システムベンダーや当社の販売代理店からそのようなことができないか、という要請をいただいておりました。

 2つ目は、SaaS・ASPベンダーが事業を始めたいときに、アプリケーションの規模や顧客の業種業態に応じて適切な形態のネットワーク環境をご提供することです。

 そして3つ目は、私たちは通信事業者であると同時に、ICTソリューションのプロバイダーでもありますから、自らもSaaS・ASP型サービスを提供していきたいと考えています。

 VPNの価格も下がり、遠隔地をつなぐ自社ネットワークが構築しやすくなったという背景もあり、NTTコミュニケーションズとしては「統合VPN」のサービスの一環としてSaaS・ASPベンダー向けに「アプリケーション接続サービス」を提供することで、「VPN上でSaaS・ASPを利用したい」というお客様の声に応える取り組みを始めました。

 セキュリティ確保の重要性からいえば、ネットワークの安全性だけではなく、データセンターの信頼性もSaaS・ASPの重要な選択基準となります。ベンダーのサーバーが設置され、さらにお客様のデータを預かる当社データセンターは、国内で最高の信頼性を自負しております。このインフラを活用していただくことで、お客様には高品質のサービスを安価にご利用いただけると考えています。

 信頼のおけるデータセンターに重要なデータを保管することのメリットは小さくないはずです。セキュリティレベルがむしろ向上するという場合もあるのではないでしょうか。つまり、難しいと思われがちだったセキュリティ管理のアウトソーシング化も視野に入れられるわけです。

 これからはネットワークだけではなく、付加価値のあるサービスをお客様へ積極的に提供したいという思いも当社にはあります。SaaS・ASPベンダーと共同でより満足度の高いソリューションをお客様に提供していくこともできるのではないかと考えています。

SaaS・ASPのセキュアなネットワークを実現する「統合VPN」アプリケーション接続サービス

NTTコミュニケーションズの「統合VPN」アプリケーション接続サービスは、ASPとVPNを1対1の限定された関係で接続するのではなく、多対多の接続を可能にするのが最大の特長。インターネットを用いずにセキュアな環境でオンデマンド型アプリケーションを選択しながら利用できる自由度の高い形式であり、ベンダーのサービス提供価格やユーザーの導入費用を抑える効果が期待できる。


セキュリティを確保しながらSaaS・ASPのメリットを享受するための「現実解」として、NTTコミュニケーションズの提案する「統合VPN」アプリケーション接続サービスは注目に値する試みといえる。もともと同社のVPNは通信品質の高さに定評があり、業務データがオンラインで流れ続けるSaaS・ASPモデルには最適な情報基盤だ。では実際にどのようなSaaS・ASPが利用できるのだろうか。次回以降、この「統合VPN」アプリケーション接続サービスの実例を検証していくことにしよう。

「統合VPN」ソリューションhttp://www.ntt-vpn.com/

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