■上司と部下の危機的ケース2■
プロジェクトスタート時に承諾を得ていた案件なのに、成果物の納品間近に上司から「ダメ出し」を受けた。早急に手戻り作業をしなければならないし、もし納品に間に合わなければ、自分の評価が下がってしまう……。
「このような状況はそもそもきちんとした事前の報告・連絡がなされていないことが原因となる場合がほとんどです。また、特に事実が記録として残されていないということが考えられます。立ち話など、どんな場面であっても、承諾事項など相手と同意を得たことについては、きちんと書面に残すことが大切です。つまり、議事録を作り、『今日の打ち合わせでは、こう決まりましたね』と確認する作業が抜けていることが原因で、後々に問題が発生しています。自分だけが“合意を得た”と思っているだけでは不十分で、相手にも“合意した”ことを意識させるようにしましょう」
評価云々を言う前に、そもそも上司とのやりとりの方法として、口頭だけではなく文字で残すことがいかに重要かということだ。また、これらの確認作業のようにメールでのやり取りが多くなる場合、注意点は何だろうか。
「現在は、何でも『CC』をつけるクセがついているようですが、絶対に目を通して欲しいメールについては、必ず『TO』で送り、さらに、電話確認や可能なら自ら足を運び説明するぐらいの配慮が必要です。CCで送ってきたメールは見られていないと思ったほうがよいでしょう」
社内評価という現実の受け止め方
熊原さんは、これらのケースは結局すべて、事実に基づいたしっかりとしたホウレンソウ、つまり報告・連絡・相談ができていないのが原因だと話す。ホウレンソウをすれば、自分自身の存在をアピールこともできるし、上司との行き違いによる“ダメ出し”をされることもなくなるというわけだ。
「ホウレンソウで大切なことは、忙しい業務の中でそれをいかにスムーズに行なえるかという点でしょう。そのためには事前に上司とタイミングを決めておくべきです。また、そのためにはプロジェクト全体のミッションとスケジュールはどうなっているか、マイルストーンは何か、関係する部門や得意先はどこか、その中での自分の役割は何かを上司に確認しておくことが必要となります」
また、これらの努力の上で出た評価結果であれば、あとは自分でその評価を真摯に受け止めるしかないと熊原さんは加える。
「最後はやはり“事実”をしっかりと受け止めることは大切です。そういう意味で、自分がどのように評価されたのか、まずはその“事実”を把握しなければなりません。当たり前のことですが、評価結果についてしっかりフィードバックしてもらうとよいでしょう。人事制度がフィードバックするルールになっていないのであれば、自分から上司に確認するぐらいの気持ちが必要です。そして、なぜそのような評価になったのか、原因となる“事実”をしっかり確認し、何をすれば評価されるのか、明確にしてみて下さい」
正当な評価が得られないことを悩んでばかりいるのでは何も解決しない。評価が得られないことを自責で捉え、原因に目をやり解決策を探すこともやはり大切ということだ。
次回後編では、中間管理職の社内評価の悩みと対策を紹介する。
- ■取材協力
- SMBCコンサルティング株式会社
この連載の記事
-
第68回
ビジネス
『オバマ現象のからくり』(田中慎一) -
第67回
ビジネス
AMN新社長“ブロガー”徳力氏に聞く -
第66回
ビジネス
「完璧な上司なんて、いませんよ」 -
第65回
ビジネス
フランソワ・デュボワ 『デュボワ思考法』 -
第62回
ビジネス
こんなに差が出た! 30代給料の現実 -
第59回
ビジネス
地下巨大施設! プロジェクトは成功した -
第56回
ビジネス
エンジニアの秘められた家族生活 -
第55回
ビジネス
IT業界で10年泥のように働いてませんよ -
第54回
ビジネス
カシオG'zOneのデザインが変わったワケ -
第52回
ビジネス
“変わり種商品”に隠れたビジネス戦略 -
第52回
ビジネス
日本の家電ベンチャー、異例の存在 - この連載の一覧へ