月刊アスキー 2007年1月号掲載記事
―― とても衝撃的なタイトルですが、「2度の破産」とは何でしょうか?
実は、年収1000万円ぐらいの裕福な中流層が一番危ないんです。そもそも本書を執筆したきっかけは、私が講師をしている朝日新聞社の社員向けライフプランセミナーでした。参加者は40代後半以降で比較的収入が高く、マスコミ業界のせいか交際費などを日常的にどんどん使う人が多い。それでも現状では貯金もできて安心している。
しかし将来にわたるキャッシュフローを計算すると、あるとき教育費や住宅ローンの負担で家計が破綻し、さらに退職後の年金生活でまた破綻する。固定費の多い生活のため一気に資金繰りが付かなくなるんです。
このセミナーで私は「朝日新聞社員は2度破産する」と言ったらしいのですが(笑)、出席していた朝日新書の編集長が興味を持ってくれて執筆の話が来ました。
―― 年収1000万円なら生活に十分余裕がありそうです。
ところが、そういう人は見栄を張りがちなんです。貯金が貯まると住宅や高級車を購入する人は多いですが、それがワナ。これらは毎月の固定費を上げ、どんどん家計を圧迫します。しかも一旦あがるとなかなか下げられない。
給与も同じように上がればいいですが、固定費の上昇の幅が大きいのが普通ですから、資金繰りが付かなくなる。まずは「固定費の圧縮」が家計を改善する一番重要なポイントですね。
―― 本書にはこの「2度の破産」を回避するための具体的な方策がたくさん示されています
生命保険や住宅資金など、よく検討せずに決めてしまった多くの人がズキッとくると思います。中流層は生活に満足している人が多い。やりたいことができているからではなく、単に現在「貧乏スパイラル」に転落していない、というだけで安心しているのです。しかし、将来にわたって本当に大丈夫かというと、そうとは言い切れません。
―― これまで多くの世帯から相談を受けて、印象的な例はありますか?
いろいろなタイプの方が相談にみえます。例えば都内の商店街で散髪屋を営まれている年収300万円のご夫婦。老後を心配して来られたのですが、住宅は先祖からの持ち家ですし、生活費は毎月8万円、まったく見栄を張らない生活なので全然問題ないんです。このご夫婦なら、年金生活でも貯金ができてしまう。
逆に、1000万円以上の年収なのに生活が苦しく、家計を任された奥さんがノイローゼのようになって来られるパターンもあります。私自身も、サラリーマン時代に自分で将来のキャッシュフローを計算して愕然としたんです。このままでは、2度どころか1度の破産で終わりだと(笑)。
これではダメだ、と分かったのでこの業界に飛び込みました。あらかじめ計算をして、チャレンジする期間や最低限必要な給与なども分かった上だったので不安はありませんでしたね。
サラリーマンはとても恵まれているせいか、リスクに気がついていない人が多いんです。「将来給料が下がっても生活できるか」という判断がこれからの時代には必要だと思います。