作り込みに苦労したデジタル水準器
── GR DIGITAL IIは初代GR DIGITALからデザインを引き継いでいて、比べても違いが分からないくらいに似ていますよね。
樋口 銀塩のGRは「写真を撮るための道具」というイメージのカメラでした。その銀塩時代のGRシリーズが「GR-1」「GR-1s」「GR-1v」とずっと長く使ってもらっているのを見ると、このデザインコンセプトは変えてはいけないんだな、と感じています。
ここで目新しさを優先して作ってしまったら、今までGRを使ってくれたユーザーががっかりしてしまう。だからデザインを踏襲しているんです。
── 一方で初代GR DIGITALから増えたもの、なくなったもの、改善されたもの、技術の進歩によって必然的に変わったもの、あえて変えなかったものなどがたくさんあると思います。
樋口 要望が多かったのは先ほどお話しした内蔵ファインダーですが、これはあえて変えなかった点ですね。
要望に応えて改善した点は多数あります。例えばRAWの書き込み速度は、初代GR DIGITALでは11秒かかってましたが、ここはなんとかしようと力をいれて、約3.8秒まで高速化して、さらに書き込み中にもう1枚撮影することも可能にしました。
画質、特に画像ノイズも改善しています。「ノイズも画像表現のひとつ」と言ってくれるユーザーもいましたが、初代GR DIGITALでは、ISO感度400以上ではけっこうノイズが多いかなというのを認識してました。ここは何とか変えようと努力しています。
新しく追加したものといえば、画面のインジケーターで平行かどうかを確認できる「デジタル水準器」ですね。
── デジタル水準器といえば、(株)ニコンもデジタル一眼レフの「D3」で搭載してきましたよね。
樋口 あれはわれわれもびっくりしました(笑)。時期が重なったのは偶然です。
以前、とあるカメラマンと一緒に撮影に行ったときに実感したんですが、やはり水平がきちんと取れているかどうかで写真が全然変わってきます。だから水準器が内蔵されれば、ユーザーも喜んでくれるのではないかと考えました。これはユーザーからの要望ではなく、われわれのアイデアで実現した、GR DIGITAL IIで初めて搭載される機能ですね。
阪口 この水準器の開発は苦労しました。機能としては単純なんですが、センサーの性能を引き出すのが難しかった。
実は開発中に、内蔵センサーがこちらが要求する精度まで想定して作られていなかったことに気づきまして(笑)。最終的には何とか精度を上げたのですが、最初は焦りました。
樋口 よくチャレンジしてくれたと思います。世の中になかった機能ですから。
── デジタル水準器用のセンサーは、水準器のためだけに搭載したんでしょうか?
阪口 水準器のためだけですね。カメラの縦横検知にも使ってますが、そちらは副次的です。水準器専用のセンサーを用意して、それを縦横検知にも応用したと考えていいです。