矢印キーには戻れない
ジョグダイヤルでは、回転量に合わせてスクロールが進む。押しっぱなしのように行きすぎることなく、目当ての項目までサッとスクロールできる。しかも「回転させる」という操作は、連打に比べてとてもエレガントだ。
時には激しく回して高速スクロールを実現することも可能で、その操作性は実に爽快、使っていて気持ちがいい。これを体験してしまうと、矢印キーによるスクロールはもはや「戻りたくない過去」のようになってしまう。
「魔性の操作性」を持っている
回転式インターフェースから戻れないという体験をした人は、僕の回りにも存在する。例えば最近、ドコモからauに乗り換えた女性ユーザーの場合はこうだ。
彼女はケータイを持ち始めてからずっとドコモユーザーで、ここ1年弱はピンクの「D903i」を使っていたが、そろそろオトナっぽい色のケータイを使いたいと次の端末を探し始めたそうだ。そして、いろいろなケータイを見ているうちに、auの「W52P」のジュエルゴールドにめぐりあい、ナンバーポータビリティーを利用して機種変更をしたという。
この機種変更にとても満足していたように見えたが、使い始めて2日で、1つ重大な不満を抱くようになっていた。それが回転式のインターフェースがないことだった。
彼女が以前使っていたD903iには、回転するホイールと十字キーを兼ねた「スピードセレクター」が用意されていた。このスピードセレクターを使った、予測変換や電話帳検索の快適な操作に慣れきっていたため、W52Pがいくらオトナっぽくてオシャレであっても、使用感が野暮ったくて不満を感じてしまったというわけだ。
しかしながら、別にW52Pが悪いのではない。回転式インターフェースの魔性の操作性を恨むべきである。多くのユーザーが味わっていたのも、「回転」のない生活を強いられた、ここ最近のケータイ事情に対する物足りなさだったのではないだろうか。
「操作していて楽しくなる」ケータイの元祖
僕はといえば、もちろんジョグダイヤルのファンだが、最後にジョグダイヤル付きのケータイを使ったのは、ドコモからリリースされたのmova端末「SO210i」だった(関連記事)。
三菱電機製のスピードセレクターとは違い、こちらは縦方向のみに回転するダイヤルになるが、縦方向主体のユーザーインターフェースと、90gを切るライトなケータイ本体のおかげもあって、極楽の操作感だった。とにかくシンプルに、気持ちよく回転するダイヤル。そして予測変換「POBox」との組み合わせによって、魔法のようにリズミカルに出来上がっていくメール。
ほぼ同じユーザーインターフェースを備えていた「SO503i」も、折りたたみ型で縦方向のみのジョグダイヤル端末として多くのファンに愛されてきた1台だ。先週ご紹介したチームラボ(株)の猪子さんが語る「操作していて楽しくなる」ケータイは、まさにこれが元祖だったと言っても過言ではない。
(次ページに続く)
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