2007年11月23日 23時45分更新
VPN導入事例のここに注目!
ビジネスの生命線になるVPN
北海道で有名な焼鳥専門店「串鳥」を運営している札幌開発株式会社。事業展開する上でスピード、コスト、正確さを実現するために必要不可欠だったのが、NTTコミュニケーションズの「Group-VPN」とIP電話の「.Phone IP Centrex(ドットフォンアイピーセントレックス)」だ。今回の導入事例における技術的なポイントをネットワークマガジン編集長の大谷イビサが解説する。
前回も話したとおり、ビジネスの拡大において拠点が増え、それらをつなぐためにVPNを利用するというパターンは多い。しかし、すでにVPNにより情報がスムースに流れることを前提に、ビジネスモデルを構築している例も珍しくない。今回紹介する札幌開発も、NTTコミュニケーションズの「Group-VPN」で実現した情報システムあればこそ、多店舗展開と精度の高い受発注を実現できたといえる。
札幌開発の事例において重要なポイントは、焼鳥チェーン店の展開において、食材の製造と店舗での販売を当初から分離していたという点に尽きる。店舗の面積が狭かったという点があるにせよ、1店舗目から工場を作り、そこで食品加工を一元的に担うというのは、勇気のいる決断だ。しかし、この英断のおかげで、店舗ごとに加工処理を行なう必要はなくなり、安価なコストで品質を保ちつつ、速いペースで多店舗の展開を実現できた。
とはいえ、このビジネスモデルを実現するためには、工場から加工品を迅速に店舗に運ぶ物流だけではなく、受発注を行なう情報の流れがきちんと整備されることが必須となる。同様に、多店舗展開やチェーン店化を行なう流通や小売といった業態では、物流と情報システムの展開を戦略的に行なうことがビジネスに不可欠になる。だが、こうした情報の流れを作るためのハードルは高い。特にITにコストをかけられない中堅中小企業にとってみれば、難しい課題だ。
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| 札幌開発株式会社 代表取締役社長 末永礼造氏 |
この情報の流れという点で、同社がまず整備したのが店舗と工場間での受発注である。同社は店舗から工場への食材発注において、従来FAXを用いていた。各店舗の店長は閉店後にFAXで発注書を送り、工場ではその発注をすべて集計して、加工作業に入る。しかし、FAXでの発注書は、文字が読めない、数字が不明瞭といった手書きであるが故の発注ミスが少なくなかったようだ。発注数が確定しないと、作業に入れないため、最悪の場合、開店までに店舗への配達ができない可能性がある。こうなると、まさに製造と販売を分離したデメリットが表に出てしまう。
そこで、札幌開発が2年前に導入したのが、「Group-VPN」だ。そもそも「Group-VPN」はコスト面で安価に工場と店舗をつなぐことができる。しかも前回述べたとおり、閉域網を用いるため、セキュリティが高い。受発注データという企業にとってきわめて重要なデータでも安心して流すことができるわけだ。また、FAX+紙ベースの受発注をコンピュータベースにし、VPNでつなぐことで精度を高めた。もちろん、食材を選択し、個数を入ればいいわけだから、店舗側の担当者の作業も軽減化されたはずだ。こうした情報システムの構築の結果、発注ミスが減り、加工作業が迅速にできるようになったことで、工場の稼働率も向上したとのことだ。
とはいえ、さまざまなネットワークからの選択肢も多い中、なぜ「Group-VPN」を選んだか。まず、ルータを各拠点に置いて、それらの運用管理や課金までをNTTコミュニケーションズ側にワンストップで任せられる点が挙げられる。情報システム担当者が少ない中小企業では、こうしたアウトソーシングが可能か、どうかはサービス選びの大きな要素になる。
また、オプションサービスの豊富さもあるだろう。
「Group-VPN」では閉域網でありながら、インターネットへの接続をオプションとして用意している。札幌開発では酒販店に対する発注をインターネットで行なっているため、こうしたオプションは重要だったのだ。そして、同社にとってもう1つの重要なオプションが、拠点間の内線電話をIP化する企業向けIP電話サービス「.Phone IP Centrex」である。
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| 札幌開発株式会社における「Group-VPN」活用事例(画像クリックで拡大) |
「.Phone IP Centrex」は「Group-VPN」網内に設置されたNTTコミュニケーションズのIP電話設備を利用して、内線電話を実現するというもの。札幌開発は、「Group-VPN」と「.Phone IP Centrex」(オプション)を導入して、通信コストの削減を実現した。
IP電話は、高価な交換機なしで、音声通話を実現するため、通信コストを削減することができる。しかも「.Phone IP Centrex」では、IP電話の設備が網内に設置されているたえめ、ユーザー側には音声とIPを変換するVoIPアダプタのみあればよい。もちろん、内線だけではなく、外線として発着信することもできるため、既存の電話と比べて使い勝手が落ちることはない。
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| 札幌開発株式会社 執行役員 経営企画部長 兼 情報システム室長 扇 久雄氏。同社の事業拡大を見据えたシステムの選定から導入を担当 |
札幌開発のように複数の飲食店のチェーン店を展開していると、通話の件数は増える。店長からの各店舗の売り上げや業務の報告、本社から店長への業務的なアドバイスなどはやはり電話で行なうことが多い。こうした電話は長時間になることも多いため、拠点が増えるとともに、通信コストはアップする。この通信費を抑制するためにIP電話が導入された。導入後、通信コストは約20%削減し、コミュニケーションもより促進されたという。
単なる受発注だけではなく、VPNを使って内線電話までIP化でしまおうというのだから、札幌開発のVPN活用はかなり先進的といえる。さらに今後は「.Phone IP Centrex」で提供されているPCとWebカメラで実現するソフトフォンを活用し、拠点間の通話にとどまらず、社員間の連携をより高いレベルに引き上げていくとのことだ。
VPNの登場は、拠点間接続のコモディティ化(日用品)をもたらした。従来の高価な専用線を前提とした拠点間接続は、情報システムにおけるコストを大きく割けない中小企業においては、なかなか選択できなかった。もちろん、多くのユーザーは、安価なインターネットをうまく活用することを検討したが、セキュリティ確保や運用管理の手間とコストを考えると、見返りが得られないことも多かった。しかし、「Group-VPN」などを使って、安全な情報のやり取りを安価に行なうようになれば、今まで実現できなかった店舗展開やサービスが実現可能になる。さらに「Group-VPN」のように、ネットワーク内で提供されているIP電話などのアプリケーションを利用できれば、利便性やコスト削減などの恩恵をきわめて迅速に受けること可能だ。今回紹介した札幌開発の情報システム展開は、コモディティ化したVPNと先進的なアプリケーションサービスの特徴を活かした好例といえるだろう。
協力:NTTコミュニケーションズ株式会社
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